『不明』VS『空亡』 その1
『空亡』と名乗った怪物……。
『神眼』で視てみるものの、底が見えない。
しかし、それでも、少し分かった。
こいつは概念だ……。
『負の感情』という概念そのものだ。
だからこそ、底が見えない。
オレ程度では、どう足掻いても底を見通せない。
でも、それでも、諦めるわけにはいかない。
『我は、余は、僕は、俺は、此方は、妾は、手前は、吾は幸運だ』
声を聞くだけで背筋が凍り、動けなくなる。
『まさか……復活してすぐに復讐を果たせるとは……『玖音』の系譜に連なる者を殺せるとは……』
玖音?
誰だ?
系譜に連なるってことはオレの先祖?
分からない……分からないけど、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
『さあ、絶望せよ』
『空亡』に大量の触手が生え、そしてそれが一気に伸びてオレに迫ってきた。
「速っ!!!」
なんとか『悪食の刀』で防ぐが、全ては防げず何発かくらってしまった。
次の瞬間、触手が当たった箇所が粒子となって消えた……。
「ハ……ハハ……」
思わず乾いた笑いが出る。
やばい……触れたらアウトなのか?
いや、『悪食の刀』は、触手に触れても消えなかった。
となると、生物だけ消す能力か?
「『負傷喰い』」
とりあえず、傷を無くそうと思って『負傷喰い』を発動した。
しかし……
「なんで……治らない」