顕現
破壊神の体から溢れ出した漆黒の瘴気のようなものが破壊神の体にまとわりつき、破壊神の全身が真っ黒に染まった。
そして、ボコボコと不快な音を響かせながら破壊神の肉体が肥大化し始めた。
「なん……だよ……これ!!!」
徐々に徐々に大きくなり、やがて一つの山ほどの大きさの肉塊になった。
肥大化の途中、何度も『悪食の刀』で斬りつけたが、いくらやっても傷一つつけることができなかった。
肥大化が終わると、その肉塊に数えるのも億劫になるほど大量の目と口が出現した。
そして、その全ての口が同時に開き、
「「「祝え、恐れよ、歓喜せよ、悲観せよ、絶望せよ。我の、余の、僕の、俺の、妾の、私の、此方の、手前の、吾の……『空亡』の再誕だ」」」
全ての口から声が響き、何重にも聞こえる。
ああ、やばいな……これはやばい。
恐怖で、足が震えて動かない。
死ぬ……。
いや、ダメだ!
死んだら瑠璃が悲しむ!
死ねない!!!
逃げられそうもないし、戦うしかない!!!
やってやる!!!
オレは、『悪食の刀』を構え、『空亡』と名乗った怪物を見据えた。
◇
何もない、真っ白な空間にて……
「あれは……あの力は……間違いない……あの場所に残っていた力の残滓と同じものじゃ……何故じゃ?……何故生きている?あれは……『玖音』に殺されたはず……」