『グランドマスター』VS『煉界』 その2
〈三人称視点〉
シンは、ガートーリを威圧しながら、懐から拳程の大きさの水晶を取り出すと、それを割った。
次の瞬間、割れた水晶から、光が溢れ出し、戦場を包み込んだ。
そして、その光にあたった者が起き上がり始めた。
「良かった。生き残ってる人が結構いたようだね」
その水晶は、『再生の宝珠』という名の魔導具だった。
効果は、生きてさえいれば、どんな傷でも治すというもの。
死んでいては効果がないが、今回は、ガートーリが、破壊神のために人間の絶望の顔を引き出そうとして手加減していたがために、生きている者が多くいた。
もちろん、手遅れだった者もいたが……。
「さて、みんなは離れてて。こいつの相手をする中で、周りに気を配る余裕はなさそうだ」
シンのその言葉を聞くと同時に、復活した冒険者たちはその場を離れた。
「随分優しいな」
「そういう君こそ、彼らが離れるのを黙って見ていたじゃないか。優しいね」
「いや、私はただ、お前と存分に戦うためには、あいつらが邪魔だっただけさ」
「そうかい?」
そんな会話をした次の瞬間、シンの剣がガートーリの首元に迫った。
ガートーリは、一瞬反応が遅れ、首に少し剣をかすりながらも致命傷を受けずに避けた。
「やっぱり避けるか。まあでも、この程度ならなんとかなりそうで安心したよ」
シンはそう言うと剣を構えた。