『魔王』VS『嵐界』 その4
〈三人称視点〉
彼女は、『魔王』の娘として産まれた。
彼女は、両親から愛され、幸せな日々を送っていた。
勇者が現れるまでは……。
突如、人間たちが異世界から召喚した勇者とその仲間が魔王国カースに攻め入ってきた。
勇者たちは魔族を虐殺し、さらには『魔王』と『四天王』まだも殺した。
彼女の両親は、彼女の目の前で、彼女を守りながら死んだ。
勇者は、その時の攻撃の代償で死んだ。
彼女は、『魔王』の骸に縋りながら泣き続けた。
彼女の心は、その時壊れ始めた。
しかし、『魔王』の親友だった『吸血姫』が、彼女の心を支えた。
『吸血姫』のおかげでなんとか心が完全に壊れることはなかった。
なんとか心を安定させた彼女は誓った。
自分の両親が大切にしていたこの国を今度は自分が守るのだと。
彼女は、生き残っていた『四天王』の子供たちに協力を仰ぎ、国を立て直し始めた。
『四天王』の子供たちを新たに『四天王』に任命し、散り散りになった魔族を集めた。
そんな時、人間が軍を率いて魔族を奴隷にするために侵攻してきた。
それを知った時、彼女は『魔王』を名乗り、人間の軍を蹴散らした。
しかし、その時すでに奴隷になっていた魔族がいた。
彼女はそんな奴隷になった魔族を助けながら国の再建も続けた。
そしてついに、魔王国カースを再建することに成功した。
さらに、彼女自身も、彼女の父親の『魔王』同様、『災害指定』となった。
彼女の名はエンカ。
両親の代わりに国を守ると誓った少女。
……………………
……………
……
大量の竜巻が、エンカを襲う。
さらに、不規則な暴風も吹き荒れ、エンカの行動を妨害する。
まさに絶体絶命という状況だ。
「クソッ!こんなところで……負けるのか!?」
「そう、君は僕に負ける。さあ、その心が壊れる音を僕に聞かせてよ」
しかし、彼女の瞳に絶望の色が宿ることはなかった。
「負けられぬ!負けられぬのだ!もう二度と、あの国を、皆の笑顔を壊させないと誓ったのだ!」
「アハハッ、でも、君が僕に勝つことは不可能だ!」
「決めつけるな!余は負けぬ!勝って、民を!国を守るのだ!王として!父上と母上の娘として!絶対に、勝たなければならないのだ!民を殺させはせぬ!絶対に!」
《確認しました。民を守りたいという思いが規定以上に達しました。これにより、封印スキル『真王』が使用可能になりました》
突如響いたその声は、まさに、エンカにとって福音だった。
エンカは、産まれた時から一つのユニークスキルを持っていた。
しかし、それは黒く塗りつぶされており、読むことが出来なかった。
しかし、それが今使えるようになったのだ。
エンカから、圧倒的な圧が放たれた。
「なんだ!?それは!」
エンカは『真王』の効果をすぐに理解し、使用する。
「教える必要はないだろう?」
次の瞬間、エンカはテンペスターの後ろに居た。
そして、漆黒の炎を纏った刀でテンペスター遠斬りつけた。
テンペスターはギリギリで気付き、避けようとしたが、避けきれず、片腕を斬られた。
「なっ!何なんだよ!お前!」
「王だ」
エンカは追撃を加え、テンペスターのもう片方の腕も斬り裂いた。
そして、さらに追撃を加え、テンペスターの首を斬り裂いた。
こうして、『魔王』と『嵐界』の戦いは『魔王』の勝利で幕を下ろした。
ユニークスキル紹介
『真王』
守るべき民が多ければ多いほど、守りたいという思いが大きければ大きいほど、身体能力を際限なく強化する。