『賢王』VS『海界』 その1
〈三人称視点〉
魔導国ローン、そこには『賢王』ローンの結界が張ってあり、たとえSランクだとしても魔物である時点で結界に触れると同時に肉体が崩壊する。
そのため、魔物の襲撃は無意味に終わった。
そして、なんの被害もないまま、その日はやってきた。
『八使徒』たちによる本格的な侵攻。
それが始まった日、結界が音を立てて壊れた。
「随分と、脆い結界ねぇ」
結界を壊したのは、『八使徒』が1柱、『海界』オース。
「この結界、結構自信作じゃったんじゃがのう」
「フフフ、そう?なら、あなた、魔法の才能がないんじゃない?」
オースが嘲るようにそう言った。
それに対して、ローンは、
「そうかもしれぬのう」
特に気にした様子もなくそう言った。
「あら、怒らないのね」
「ホッホッホ、本物の天才を見たことがあるからのう。それに比べれば儂なんてムシケラじゃ」
「そう、なら、早く終わらせましょう」
次の瞬間、ローンを取り囲むように水の玉が現れた。
そして、それが光速を超えるスピードでローンに襲いかかった。
爆音を響かせながら、水煙が発生する。
次の瞬間、一気に水煙が晴れ、大量の炎がオースに向かって飛んできた。
オースはそれを水の結界を張って凌ぐ。
「やっぱり、それなりに強いのね」
「ホッホッホ」
「じゃあ、出し惜しみはしないわ。『海界』!!!」
オースのその言葉と同時に、世界が切り替わる。
いつの間にか、ローンとオースは水の……否、海の中にいた。
「フフフ、ここは主上より賜った私の箱庭。ここでは、私が理。さあ、何もできずに死ね!」
次の瞬間、海が割れた。
「は?」
「ホッホッホ、なるほど、ここであれば、これを使うところを誰にも見られずにすむのう。感謝するぞ」
そこにいたのは、1本の剣を持ったローンだった。