港町アクアの戦い その2
〈三人称視点〉
彼は、とある貴族家の三男として産まれた。
彼は、自分の容姿に自信があった。
彼は、美しいものが好きだった。
自分の容姿はもちろん、花や宝石が好きだった。
そして、醜いものが嫌いだった。
そして、彼が特に醜いと思っていたものは、貴族という存在そのものだった。
自分がその一員であることに、常に不快感を抱いていた。
三男であるため、そもそも家を継ぐことはない。
しかし、それでも貴族であることに変わりはない。
それが嫌で仕方なく、彼は成人すると同時に家を出た。
それから彼は、働く場所を探し、最終的に、とある町の酒場で働くことになった。
そこで働き始めてから、彼は自分の美容にかける時間が極端に減った。
しかし、彼はその酒場で、美しいものを見つけた。
それは、人の笑顔だった。
酒場には、人の笑顔が溢れていた。
たまに悲しそうな人や、複雑な表情をした人もいた。
しかし、酒場の空気にあてられて、いつしか笑顔になる。
彼は、そんな人の笑顔を見る日々が好きだった。
そんなある日、町に魔物が襲撃に来た。
大規模な襲撃で、一般人にも被害が出た。
そんな中、彼は、理不尽な魔物に必死に抗う冒険者を見た。
彼は、それを、とても美しいと思った。
彼は、その後冒険者となり、今では働いていた酒場には客として通っている。
彼の名は、ルシス。
美しさを探求する者。
……………………
……………
……
「真に……美しいものを……醜い……だ……と……?」
古代黒狼の前足が無理矢理上へと押し上げられる。
「理不尽なものに、必死に抗う……その……姿こそ……この世で……最も……美しい……ものじゃ……ないか!!!」
前足を持ち上げられ、古代黒狼はバランスを崩し、倒れる。
「その程度の感性しか持たぬ愚物に、僕は負けない!立て!醜狼!!!」
「醜狼……醜狼ダト!?!?!?」
「殺ス!」
古代黒狼の猛攻が始まった。
しかし、ルシスは先ほどまでとは比べ物にならない速さでそれを避ける。
そして、
「まず……1体」
1体の古代黒狼の首が落ちる。
古代黒狼は、何も反応が出来なかった。
「2体目」
また、古代黒狼の首が落ちる。
「何ナノダ!貴様!」
「僕は、美しい者さ!!!」
そうして、最後の古代黒狼の首が落ちた。
「フッ、僕の前で美しいものを否定するから、こうなるのさ☆」
ちなみに、海からも魔物は来ていたのだが、暴れ回る漁師たちの手によって、全く上陸出来なかった。
ユニークスキル紹介
『自意識過剰』
自己評価が高ければ高いほど、身体能力を上昇させる。逆に自己評価が低ければ低いほど、身体能力を低下させる。どちらも限界はない。