神化ノ間
「ボクの……負けだね」
『九喰い』が苦しそうな表情をしながらそう言った。
「お前、最後手を抜いたな?」
『九喰い』は最後、一瞬オレへの攻撃を止めた。
時間にすれば0.01秒にも満たない。
でも、オレとの戦いではそれは決定的な隙になる。
こいつはそれを理解しているはずだ。
「あ、バレてた?」
「なぜだ?」
「そうだね……ボクはね……君がボクを使うに足る存在だと……最初から……認めてたんだよ?だから、記憶を取り戻すヒントも出した。もちろん……本気の君と戦いたかったっていうのも……理由ではあるんだけどね」
「そうなのか?」
「うん」
「……そういえば、ここは結局どこなんだ?」
「それは……すぐに分かるよ……」
「どういうことだ!?……『九喰い』!?お前消えかけてるぞ!」
突如、『九喰い』が粒子となって消え始めた。
「ああ……同化が始まったようだね」
「同化?」
粒子となった『九喰い』が少しずつオレの体に吸収されていく。
それと同時に、様々な情報がオレの頭に流れ込んでくる。
ここがどこなのかも、流れ込んできた情報の中にあった。
ここは、オレの魂の中……。
そして、『神化ノ間』とも呼ばれる場所……。
ある一定以上の力を身につけた亜神の魂の中には『神化ノ間』が形成される。
亜神はある一定以上の権限を持つ神の認証を得ることで『神化ノ間』へといくことが出来、そこで自身の準権能と戦う。
『神化ノ間』にこれた時点で神へと至ることは確定しており、準権能との戦いは、どちらの自我が表へ出るかを決めるためのもの。
敗者は粒子となって勝者の自我に吸収される。
そうすることで、完全な神へと至る。
そういう仕組みらしい。
ちなみに、オレはどうやら、肉体の崩壊を防ぐために生存本能だけでここに来てしまったようだ。
確かに、神へと至れれば、肉体の崩壊も止まり、さらにすでに崩壊してしまった場所も治るだろう。
というか、今オレの肉体崩壊してんだ……あまりの激痛にすぐ気絶してしまったからあれがなんだったのか分かんなかったけど、あれは肉体の崩壊に伴う痛みだったってことか……。
「さて……そろそろボクは完全に消える……1つ……言っておかなくちゃいけないことがある……完全な『九喰い』の九つめの『喰』は……神へと至ったとしても、使えないと思う……あれは……『・・・・・』だから……それじゃあ、そろそろ君は起きる時間だね……楽しかったよ……今まで」
『九喰い』はそう言い、完全にオレの中に吸収された。