九尾の少女
走馬灯を見終わった頃、オレは地面らしきところに着いた。
落ちるスピードは随分遅く、骨折とかもしなかった。
何もない真っ暗な空間。
それが、オレが今いる場所だ。
でも、一箇所だけ、やけに明るい場所があった。
そこにいくと、9本の尾を持ち、頭に耳がある少女がいた。
少女はオレに気づくと、近寄って来て、
「初めましてというべきかな?九喰」
「なんで、オレの名前を知って……」
「ボクはずっと君を見ていたからね」
「見てた?」
「そう、君が生まれてから、ずっと」
「君は……一体……」
「それは答えられない。自分で考えな。さて、ここに来てしまった以上はここのルールに則り、戦おうか」
「え?」
次の瞬間、オレの腹にありえないほどの衝撃が走った。
オレは遠くへ吹っ飛ばされた。
痛い、痛い、痛い!
なんだ……これ、一体なんなんだよ!
ルールってなんだよ!
「やっぱり異世界に行ってからの記憶が無くなってるね。記憶があれば、今のは防げてた。尾も耳もなくなってるし、正規の手順を踏まずにここに来た代償かな?」
「何を……言って……」
「でも一時的なものだろう。多分いずれ思い出す。でもその頃にはボクに殺されてるだろうしなぁ……どうしよ?流石に無抵抗のやつを殺すのも嫌だしな。ああ、そうだ、ヒントをやろう。君の本当に望むもの……それを自覚できれば、記憶もすぐに戻る。だから、早く自覚してね。できれば、ボクに殺される前に」
また強い衝撃がオレの腹に走った。