幕間 悪意の塊
数多の世界の知的生命体の悪意が集まり、それは生まれた。
それが生まれたのは、とある宇宙の片隅だった。
それは成長を続け、やがて意思を持つようになった。
意思を持ってからそれは、今までのように本能のままに悪意を吸収するのではなく、もっと効率的に、もっと大量の悪意を吸収し、成長するようになった。
そして、それはついに、1つの世界を飲み込んだ。
それは、世界の味を知った。
なんて美味しいんだろうと、それは思った。
それからそれは、幾つもの世界を食べた。
そして、とある世界にやってきた。
その世界でそれは初めて、敗北を経験した。
圧倒的な強さの者だった。
しかし、一矢報いることはできた。
最後に放った攻撃で、重傷を与えた。
自分に勝利した者はしばらくすれば死ぬだろうとそれは思った。
しかし、しばらくすれば死ぬのはそれも同じだった。
それは、すでに肉体を失い、意志だけの存在となっていた。
それの肉体は完全に消滅させられ、それに勝利した者は肉体が残っている。
完璧な敗北だった。
しかし、それは意志だけの存在になりながらも、生き足掻き、そして、数多の世界を渡り、悪意を吸収し続け、力を取り戻していった。
そんなある日、それはとある世界で不思議な空間を見つけた。
それは、ありえないほど厳重に封印された空間だった。
それは、不思議とその空間の中に自分の求めるものがあると、そう感じた。
それは、今までに取り戻した力をほぼ全て使い、封印された空間に入った。
そこで、それは見つけた。
自身の最高の器たりえる素質を持つ者を。
それは器に気づかれぬように器に入った。
そして、しばらくは息を潜めることにした。
器の中で、器にも感情が共有されてしまうほどの九尾の狐への憎悪を燃え滾らせながら。