破壊の神
「戦場にある全ての魂を吸収しなさい」
ファンタズムがそう言った瞬間、戦場にあった死んだ者たちの魂が、虹色の玉に集まり始めた。
「『掌握』!魂たちよ『止まれ』!」
瑠璃が『掌握』を発動するが、魂たちは止まらない。
「どうなっておる!」
「フフフ、無駄ですよ。この宝珠は、『竜王』から作った物……、当然、『竜王』の能力である『支配』もこの宝珠にはある……そして、『支配』は、私が少し手を加え、準権能の域まで至らせています。あなたの『掌握』が『支配』よりも格上だったのはあくまで、同じユニークスキルだった時のこと。準権能とユニークスキルでは、格自体が違うのです」
「ならば、魂そのものを破壊してしまえばいい!」
瑠璃がそう言うのと同時に、オレと瑠璃は魂へ直接攻撃を始めた。
しかし、オレたちの攻撃は全て魂をすり抜けた。
「どういうことだ?この魂ならオレたちの攻撃は効くはずなのに!」
「フフフ、その魂は、私が幻にできますからね。」
そういうことか!
「なら、お前を直接攻撃する!」
オレは、ファンタズムに殴りかかった。
いや、待て!
こいつは魂も幻にできるのか?
だったら、オレの攻撃はこいつには効かないということになる!
オレの拳は、ファンタズムをすり抜け、そして『狐火』を纏っているにも関わらず、こいつは熱がるそぶりを見せなかった。
「フフフ、私は自身の魂も幻にできます。あなたの攻撃は全て無意味ですよ」
何かないか?こいつにダメージを与える方法は!
……………
クソ!何も思いつかない!
そんなことを考えている中、ついに戦場にある全ての魂が玉に吸収された。
「さて、これで負の感情を持つ魂は集め終わりました。次は、我らが神の信徒の魂です!」
「は?」
次の瞬間、戦場から結構離れた場所で大量の神力が暴れるのを感知した。
そして、その方角から大量の魂が玉に向かって集まり出した。
あの場所は……確か、ルーティ神聖王国があった場所だ!
『神眼』で確認してみると、そこには何もなかった。
更地だけがそこにあった。
マジかよ。
ルーティ神聖王国……滅ぼしやがった。
それにあの神力……ファンタズムのものと同質のものだ。
つまり……ルーティ神聖王国にもファンタズムがいたということか。
いや、それより、こいつは『我らが神の信徒』って言ったよな。
つまり、ルーティ神聖王国が進行していた神がこいつが今復活させようとしている神なのか?
いや、それより、こいつが今復活させようとしている神って、まさかかつて封印された破壊の神か!?
創造神が封印したっていうあの……。
というか、ルーティ神聖王国が信仰していた神が破壊の神!?
「気付いたようですね!そう!ルーティ神聖王国こそ、我らが神を信仰する国!私が立ち上げた!我らが神への供物とするための国なのです!」
「お前が……立ち上げた?」
「ええ、ルーティ神聖王国の法王が私なのです!」
……いや、話してる場合じゃないだろ!
どうしたらいい!?
このままじゃ本当に復活しそうだぞ!
ルーティ神聖王国の魂も全て吸収された。
玉を奪えばいいか!?
いや、それでも玉を幻にされて終わりだろ!
そんなことを考えていると……。
「さて、あとはダメ押しで勇者たちの魂も使いましょう」
ファンタズムはそう言うと、空間に亀裂を入れ始め、そして、無理矢理異空間を開いた。
そこには、勇者たちがいた。
こいつ……オレの異空間をこじ開けやがった!
異空間が開いた瞬間、勇者たちはファンタズムによって殺された。
そして、すぐにその魂を玉に吸収された。
「やっと……、やっとです!やっとお会いできる!」
次の瞬間、世界全域に広がっている陣が光を放ち始め、そして、ファンタズムの真下に黒い穴が現れた。
「これだけの陣を描いてなお、この程度しか開かない……やはり創造神の封印は厄介です。しかし、これぐらいの大きさがあれば、供物を捧げるのには十分です!これだけの魂があれば、我らが神は力を取り戻し、自ら封印を破ることができるでしょう!」
ファンタズムはそう言い、穴へ玉を落とした。
オレは、何も出来なかった。
静寂が広がった。
そして、突如としてその静寂は破られた。
穴からありえないほどの量の神力が溢れ出し、そして、穴が広がり、そして、1人の青年が……そこから姿を現した。
その青年は、全身が穴から出ると同時に凶悪な笑みを浮かべ、圧倒的な神力を解放した。
「グッ……ア」
神力の解放……たったそれだけで、魂が少し傷ついた。
これは……やばい。
シャレにならない。
「無理だろ……これ……」