VS人影 その1
〈三人称視点〉
「ずいぶん簡単に姿を現すのだな」
ルリは警戒しながら、現れた人影に声をかけた。
「ええ、別にあなたから逃げたわけではありませんから」
人影は余裕そうな声音でそう言った。
相変わらず、ルリには人影の顔はモヤがかかっていてよく見えない。
「ほお」
「あなたは確かに強いですが、警戒するに値しません」
「そうか……。なら、試してみるとしようぞ!」
ルリはそう言うと、人影に殴りかかった。
「なるほど、魔法は効かないと見て物理で攻撃してきますか……。ですが、無意味ですね」
人影にルリの拳が刺さった。
しかし、ルリには自分の拳が何かに当たっているという感触がなかった。
「実体が……ない……?」
「そうとも言えませんよ」
次の瞬間、ルリの顔面に強い衝撃が走った。
人影の拳がルリの顔面に当たったのだ。
「グッ……どうなっている」
「さあ、どうなっているのでしょうね。では、これはどう対処しますか?」
人影が手を上に上げると、上空に大量の漆黒の炎が出現した。
「魂壊ノ黒炎……いや……幻か?」
ルリはその炎を『竜眼』で見て、それを幻だと判断した。
事実、それは合っていた。
今は……。
「『反転』」