虹の宝珠
〈三人称視点〉
「フンッ!我を救ったこと、褒めてやろう」
転移した先の薄暗い部屋で、ドラクルスが人影に向かって偉そうにそう言った。
「いえいえ、私はあなたの肉体と魂が欲しかっただけですので、お気になさらず」
人影は、特に気にする素振りを見せずにそう言った。
「何だと?」
ドラクルスが訝しむと、
「そのままの意味ですよ。愚かな『竜』よ」
次の瞬間、人影の腕がドラクルスの胸から生えていた。
「グッハ……な、何を……する……」
「肉体と魂さえあれば、あなたは死んでいても問題はない……いえ、死んでいた方が都合が良いのです。あなたは『器』……いえ、『器』の材料なのですから」
「この……程度の……傷で、我を殺せると?」
「確かに、あなたの回復力では治せるかもしれませんね。まあ、私の神力がそれを阻みますが」
「ク……ソ……が」
ドラクルスは力無く倒れた。
「さて、それでは、『器』の作成に取り掛かりましょうか」
その言葉と同時に、ドラクルスの周りに複雑な魔法陣が現れた。
魔法陣は、完成と同時に光り輝き始め、そして、ドラクルスの肉体が変化を始めた。
肉体と魂が混ざり、一つの物質となり、形を変え、やがてそれは、一つの拳代の虹色に輝く半透明の宝珠になった。
人影はそれを拾うと、部屋の中央にある机の上の水晶に触れた。
すると、水晶から7つの光の柱が現れた。
その光が収まった時、そこには、ホログラムのような7つの人影があった。
「それでは、始めましょうか」