愚竜 その5
〈三人称視点〉
「弱すぎて話にならぬな。これではただの弱い者いじめだ」
全身傷だらけになり、肩で息をしているドラクルスにルリは冷たく言った。
「ふざけるな!我は『竜王』!この世界の王!こんなところで負けられるものか!」
ドラクルスは激昂するが、ルリは態度を変えず、無表情のまま冷たくドラクルスを見下ろす。
「しかし、我に手も足も出ていないではないか」
「まだだ!我が負けることなどあり得ぬ!」
「そうか?ならばそう思ったまま死ぬがいい。魂もろとも滅ぼしてやろう」
ルリはそう言うと、掌に大量の魔力を集め始める。
そして、漆黒の炎を生み出し、それを勢いよく放った。
そして、それによってドラクルスは魂もろとも滅びる……はずだった。
「それは困りますね」
その言葉と共に一つの人影が現れ、ルリの炎を掻き消した。
「何者だ?」
ルリが自分の炎が掻き消されたことに驚きつつも、相手にそう問いかけると、
「私?私は……そうですね。ここでは言わないでおきましょう。いずれ分かります」
「そうか?まあいい、お主は危険そうだ!ここで滅ぼしておいた方が良さそうであるな!」
ルリは一気に先ほどよりも強大な漆黒の炎を放った。
しかし、またしてもそれは掻き消された。
「『器』の回収はできました。それでは、またお会いしましょう」
人影はそう言うと、ドラクルスを抱えて消えた。