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反転
〈三人称視点〉
戦場の上空……、そこに、一つの人影があった。
「ふむ……。予想より早くあっさりと負けてしまいましたね。『竜』の群れ……。『竜王』ももう長くないでしょうし……。魔族の贄を集めるためには、やはり介入するしかありませんか……」
そう言うと、人影はその体から大量の魔力を放出し、空に巨大な魔法陣を描き始めた。
「さあ、絶望しなさい。贄どもよ」
魔法陣は、戦場の空全域にまで広がり、そして今光り輝き始めた。
「いでよ『幻影軍』」
その言葉と同時に、魔法陣から大量の紫がかった黒色の粘性の何かが溢れ出た。
そして、それは分裂をはじめ、幾つもの粘性の何かが出来上がり、それはやがて、生物の姿へと形を変えた。
種族はバラバラで統一性はない……しかし、それは個ではなく、群れとして、行動を始めた。
行動を始めたそれらは、魔族に攻撃を始めた。
しかし、それに実体はないようで、魔族たちには何の被害も出なかった。
しかし……、実体を持たないそれらは、召喚主たる人影の能力によってそのあり方を変える。
「『反転』……『実体軍』」
戦場に再び、絶望が現れた。