愚王
〈三人称視点〉
ルーティ神聖王国の王城の一室に、各国の王たちが集まっていた。
王たちは、戦争が始まった当初は全く負けることなど考えておらず、その顔には不敵な笑みを浮かべていた。
しかし、今その顔にあるのは焦りだけだった。
「どうなっておる!なぜ我々人間側が負けておるのだ!?」
1人の王がそう憤慨すると、
「魔族側の戦力が予想よりも大きかったですね。それに加えていきなり勇者たちが戦場から消えたというのも大きいでしょう」
「そうだ!そのことだ!どうなっておるのだ!一体!」
「分かりません。報告では、戦争が始まった途端勇者たちの足元に魔法陣のようなものが現れ、勇者たちはそれに吸収されたようです。今、我が国の情報部が急いで行方を探しています」
「神聖王国の情報部は優秀らしいですし、それならば見つかるのは時間の問題でしょう。それよりも、Sランクの魔物を倒したと言われる100人の兵士はどうなのですか?ちゃんと活躍しているのでしょうか?」
「今、彼らは魔王軍の『四天王』と『吸血姫』配下幹部の『三大真祖』の対処にあたっています。どうやら複数人であたる必要があったようで」
「チッ、頼りにならん奴どもよ」
「しかし、幹部さえ殺してしまえば、奴らの士気も下がるでしょう」
「それもそうだが」
こうして、自身は何もせず、ただただ成果を出せない兵士への不満ばかりを口にする戦力差すらも理解しない愚かな王たちの会議は続く。
彼らは決して、戦争を止めようとは考えない。
自分たちの身に危機が迫っていることすら理解しない。