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エネミーロール【お願いっ! 魔王を倒して異世界人さまっ!】  作者: えたーなる・ばけーしょん
第3話 砦を守るゴブリンたち【1-13-EX】
24/43

ゴブリンの砦解禁


 やってきたぜ。アップデート当日!

 レベルキャップが20まで解放。

 そして第1エリア最終ダンジョン【ゴブリンの砦】が昼の12時に解禁だーっ!

 難易度はA~D級の4つ。

 基本となるのはエネミープレイヤーが一切関与しないD級。登場する魔物は固定で完全AI制御。即死トラップがないので最も簡単な難易度だ。

 C級以上がエネミープレイヤーのダンジョンで下位がC級、中位がB級、上位がA級と分けられている。上位のダンジョンほど報酬やドロップアイテムが良く、さらにボスが中身入りだとドロップ率がアップする仕様だ。

 ちなみにオレはギリギリでA級だった。ランキングは毎日更新されるので、B級落ちにならないように頑張るぞっ!

 一般プレイヤーは好きなダンジョンを選べることができる。そのとき中身入り(エネミープレイヤー)に挑戦する場合は順番待ちなどのルールがあるけど、オレにはあまり関係ないので割愛。

 ……さて、今回のダンジョンにおける攻略人数は最大で6人だ。クエスト内容が“ゴブリンの砦に忍び込んでボスの暗殺”のため参加人数が少なくなっている。

 登場するのはゴブリン系のみで最大で100体を配置可能。

 ダンジョン構造は砦に続く道と門。砦内には7つのフロアとボス部屋がある一本道だ

 設置可能なトラップは定番の【落とし穴】や【壁から矢】などのシンプルなモノしかないが、即死もありえるのでC級以上は斥候がいないと攻略は困難だろう。


「――最終確認ヨシ!」


 ボスの砦ゴブに憑依したオレは拠点の和室で待機していた。

 プレイヤーがボス部屋に到達するまで暇だからダンジョン内に設置された不可視カメラで一般プレイヤーの攻略鑑賞会。一応、ボス以外のゴブリンも操作可能なので機会があれば飛び入り参加する予定だ。

 きっと他のエネミープレイヤーもオレみたいにダンジョン解禁を待っているだろう。

 早めに昼食は摂った。トイレも行った。準備オッケー。


 ――さぁ、いつでもこいっ!


   × × ×


 ――ピイイイィィィィイイイ!


 門番をしていた兵ゴブの警笛が響いた。一般プレイヤーがやってきた合図だ。

 モニターに侵入者の姿が映し出される。ちょうど男性1人と女性3人のパーティーが門番を倒したところだった。


「――フッ! A級ダンジョンと聞いていたが大して強くなかったな」

「さすがですわ。イーケメン様!」

「イーケメン様。格好いい」

「きゃー! イーケメン様最高!」


 ロールプレイだとわかっていても、オレが鍛えたゴブリンを雑魚呼ばわりされるのはムカつくな。……まぁ、いい。笑っていられるのも今だけ。本番はこれからだ。

 お助けNPCにイーケメンと呼ばれている男が先頭になって砦に入ってくる。

 第1フロアは砦の中でボス部屋に次ぐ広さだ。

 入り口の正面25メートル先に第2フロアの扉がある。その扉の左右に階段があってフロアを囲むように二階廊下が設置。二階廊下を支える大きな柱が死角になっているなど待ち伏せに有利な作りだ。

 D級の場合、第2フロアの扉から兵ゴブが次々と出現してくるが……。


「……静かだな。敵が出てこない」

「なんだか不気味ですわ。イーケメン様」

「イーケメン様。怖い~」

「きゃー! イーケメン様付き合ってー」

「心配は要らない。3人は俺が必ず守る。――さぁ、俺から離れずに付いてくるんだ」

「「「――はい!」」」


 4人は寄り添うように前へ進んでいく。そして、床が開いた。


 ――ガコンッ! ひゅ~~~ぅ、グシャー!


 みんな仲良く落とし穴に落ちて退場した。

 初手落とし穴は鉄板だよなっ!


   × × × 


 ――ピイイイィィィィイイイ!


 早くも2組目の合図だ。

 今度は男性2人。……って、ウサギ狩りイベントで見た大盾のアバターがいた。股間に角をぶっ刺したからよく覚えている。カンチョーとグリィセリンだっけ?


「カンチョー気を付けるッス。静かだけどこの部屋には魔物の気配をたくさん感じるッス」


 ――おっ、今度はちゃんと気付いたな。


「待ち伏せであるか。しかし所詮はゴブリン。数は多くても冷静になれば対処できる。防御姿勢を忘れるな。そうすれば防御アシストが機能してガードできるのである!」

「――オッス!」

「まずは吾輩が前に出るのである」

「頼りになるッス、カンチョー!」


 ――ガコンッ! ひゅ~~~ぅ、グシャー!


「――か、カンチョォォォォッ!」


 カンチョーは「わーっ!」っと叫びながら落とし穴に消えていく。残されたグリィセリンは撤退した。


   × × ×


 ――ピイイイィィィィイイイ!


 今度は6人の男性のパーティー。大盾が2人。片手剣、大斧、魔法使い、ヒーラーが各1人ずつのフルメンバーだ。


「魔物のAIは強くなっていたが、ステータスはD級と変わらないようだ」

「この調子ならボス戦も余裕だな」


 D級ダンジョンを攻略済みか。装備もいいモノが揃っているし、これは期待できるぞ。


「総員。トラップの位置は把握しているな。目指すは最速クリアの称号。最短距離を突っ走るぞ」

「「「「「――おう!」」」」」


 ――ちょっと待てーっ!

 C級以上のダンジョンは即死トラップがあるし、配置もエネミープレイヤーが管理しているから最短距離を進んだら……。


 ――ガコンッ! ひゅ~~~ぅ、グシャー!


 おめでとう。最速退場の称号は君たちのモノだ。

 はい、次~。


   × × ×


 ――ピイイイィィィィイイイ!

 ――ガコンッ! ひゅ~~~ぅ、グシャー!

 

 ――ピイイイィィィィイイイ!

 ――ガコンッ! ひゅ~~~ぅ、グシャー!

 

 ……そろそろ落とし穴オチは飽きたな。

 みんな引っかかり過ぎだろ。警笛も毎回鳴っている。もっとできる斥候職はいないのか?


 ――ピイイイィィィィイイイ!


 次の挑戦者は、ウサギ狩りイベントで戦った片手剣士レオーラ。そうなると相方の女神官エイロナも……いなかった。今回はレオーラだけだった。


「エイロナに認めてもらうためにA級ダンジョンを攻略して見せる!」


 二人の事情はよくわからないけど、初手落とし穴に引っかかるようじゃ認めてもらえないと思うぜ。


「……ん? 何か罠がある? 落とし穴か? …………こっちにも落とし穴? あっちにも! このフロアには何個の落とし穴が仕掛けてあるんだ?」


 ――はっはっはー、設置限界の18個だっ! エネミーポイントを使いまくったぜ!


「……さすがA級ダンジョン。罠探知がなかったら厳しかった」


 レオーラが落とし穴の床を避けながら進んでいく。……けどな、このフロアのギミックはそれだけじゃないんだぜ。

 レオーラがフロア中央にやってきた。

 ――さぁ、お前たち仕事の時間だーっ!


「「「「――ギャアアァァァッス」」」」

「――何だと!?」


 扉の奥、柱の裏、2階廊下、隠れていた総勢30体の兵ゴブが一斉に登場。装備した弓矢でレオーラを狙う。

 ――お前たち、ブチかませー!


「クソ! 落とし穴だらけで逃げ場がない。……ぐはっ! …………エイロナすまない。――ぐわああああぁぁぁぁ!」


 矢の雨に曝されたレオーラが砕け散った。本日最高記録更新だ。しかも落とし穴以外での死亡。誇っていいぞ!


   × × ×


 次のパーティーは男性4人女性2人か。

 第1フロアの扉が静かに開く。扉の間から男が室内を覗き込んだ。


「…………誰もいない?」


 ――おぉ! 初めて警笛が鳴らなかったぞ!

 実はこのダンジョン、警笛の有無で難易度が大きく変わるギミックがある。

 門番や巡回中の兵ゴブを上手に処理して侵入すると【平常モード】継続で出現する砦内の兵ゴブの数が大幅に減る。逆に警笛が鳴った瞬間【戦闘モード】へ移行して、寝ていた大量の兵ゴブたちが飛び起きて戦闘配置につくという設定だ。

 第1フロアの場合は警笛が鳴らなければ戦闘なしで通り抜けられるようになっている。トラップに注意するだけでいい。

 ちなみに一般プレイヤーたちはダンジョン突入前に必ず冒険者ギルドで説明を受けていて、そこで“潜入ミッション”だと攻略のヒントを与えられている。それに気付けるかはプレイヤー次第。


「……このパターンは初めてね」

「そういえば警笛が鳴らなかったな。それと関係があるのか?」

「ケンショーはどう思う?」

「事前に受けた説明を考慮すると、警笛の有無で状況が変わる可能性は十分にある」

「攻略ブログのネタになりそうね」

「……もしくは誘い込むための罠かもしれない。見たところこのフロアは落とし穴が多くて移動が制限される。例えばフロア中央に到達した瞬間に敵が出現して遠距離攻撃されたらひとたまりもないだろう。姿を隠せる柱の影、2階廊下は特に怪しい。……手榴弾を投げたくなる」

「手榴弾は持ってきていないな」

「気配察知は?」

「何も感じない。でもレベルが低いから信頼度は低い」

「戦闘になったら遠距離攻撃が必須ね。空を飛べると落とし穴は気にしなくてよさそう」


 ケンショーという男はいい勘をしているな。警笛が鳴っていれば推測は全部当たっている。


「――よし。色々試して変化があるのか検証を始めよう。……まずは索敵魔法からだ。魔力を検知できる敵がいれば動きがあるはずだ」

「…………使ったけど、このフロアに敵はいない」

「特に反応もないか。……次は落とし穴だ。起動したら警笛が鳴るかもしれない」


 今回のダンジョンには警報機能のある罠は存在しないから大丈夫だぞ~。

 そのことを知らない挑戦者たちは第1フロアで検証を続けた。

 ……そして、タイムアップ。


 ――ピイイイィィィィイイイ!


「……む? 何もしていないのに警笛が鳴った」

「もしかしたら時間制限があるのかも」

「――おい、奥の扉からゴブリンが出てきたぞ!」

「弓を持ったゴブリンが2階に移動している。――よし。警笛が攻略のカギになることは間違いないだろう。今回は撤退だ。戻って攻略ブログを更新。動画をアップして広告費で稼ぐぞ!」

「「「「「――了解!」」」」」


 ……あぁ、帰っちゃった。


   × × ×


 本日の【ゴブリンの砦〔クゥロ〕】攻略状況。

 退場者1547名。撤退79名。

 最高到達フロア5。

 

 ――7時間も待ったのにボスの出番がなかった!

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