流れ星に願いを
「流れ星、見に行こうよ。」
学校帰りに、さくちゃんが言った。
「お母さんに聞いてみないと。」ミカが言うと、
「今日の10時くらいに流れ星いっぱい流れるんだって。」
毎日9時に寝るミカにとって、10時は遅い時間だ。
10時過ぎまで起きていたことはあるけど、それは特別な日。
「こっそり見に行って願い事しよう」
願い事!ミカには七夕の短冊に書けなかった秘密の願い事がある。
迷ってたら家の前に着いていて、
「それじゃ10時に待ち合わせ!」
と言って、さくちゃんは自分の家に入っていった。
ミカは一人っ子だ。
小学校に入る前は、友達の家に弟や妹が生まれるたびに次はうちかな?とドキドキしていた。
でもいつになってもお母さんのおなかは大きくならなくて、小学生になると赤ちゃんが生まれるという話もほとんど聞かなくなった。
さくちゃんちが犬を飼いはじめたから、
「うちも犬が飼いたい」
と言ってみたけれど、お母さんはうなずいてくれなかった。
「毎日ごはんをあげて、散歩に連れていかないと死んじゃう」
と言われたら、命の責任をおえるほどミカは大きくなかった。
「家族が増えますように」
それがミカの秘密の願い事。
弟か妹。無理だったら犬。
3人家族で子どもが1人だけではつまらない。
そんなことをぼんやり考えていたら、晩ご飯の時間になって、もうすぐ寝る時間だ。
ミカのベッドの横の窓から外に出られるから、パジャマの上に着る服と靴を用意しておこう。
靴はベッドの下に災害用に置いてあるのをはこう。
9時におやすみなさいを言って、疑われないようにベッドに入る。
お母さんがお風呂に入る音が聞こえたら、座って待っていよう......。
気づいたら朝だった。
しまった!寝ちゃった!
願い事できなかった!
がっかりして食卓に行く。
休みの日はいつも遅くまで寝ているお父さんが珍しくもう起きている。
「おはよう」
2人ともにこにこして、まだ朝ご飯の用意ができていないのに席に座った。
「春に弟が生まれるよ」