第9話 呪王の指輪
「く、くそぉ……イーサンの分際で……どうしてだ。どうしてそんな力を得たんだ!!」
悔しそうに唇を噛み、答えを求めてくるレイクだが――。
「教えるワケないだろ。もういい……レイク、お前にはここで沈んで貰う。コリーナ、お前もだ。お前はアイリーンを傷つけた分だけ痛みを味わってもらう」
「舐めないで欲しいわね! この私は魔法使いよ。無能な兄さんはともかく、私はそれなりに魔法が使えるの……こんな風にね」
ニヤリと笑うコリーナは、メアに指を向ける。……しまった! 距離がありすぎて俺は届かなかったが、アイリーンがメアを庇った。
「…………あぁッ!!」
「アイリーン様っ!! うそ……」
馬鹿な……あの人差し指を向けただけで、アイリーンが……、彼女は、無惨にも下半身を失ってしまっていた。上半身しか残っていない。
「…………よ、よかった……メアさんが生きていて」
「ど、どうしてわたしを助けて……」
「はじめての……ともだち……だったから……」
ぱたっと息を引き取るアイリーン。
彼女は死んだ。
「コリーナ、お前……」
「ふふっ、ざまぁないわね、アイリーン!」
「ふざけんな、コリーナ!! お前よくも俺の大切な仲間を……殺したな!!!」
「当然でしょ。最初からそのつもりだったし」
……それにしても、あの魔力……桁違いすぎる。いくらなんでも学生の持つ魔力ではない。コリーナのヤツ、違法な魔導具を使用しているな。……あの人差し指の『指輪』だな。
「おぉ、よくやった我が妹、コリーナ! お前に誕生日プレゼントした『呪王の指輪』が役立っているようだな。それは高かったんだぞ」
「ありがとう、兄さん。こんな時に役に立つだなんてね……フフフ」
コイツ等は悪魔だ。
人殺しを何とも思わない殺人鬼と変わらない。
「……イーサン様……アイリーン様がぁ…………こんなの酷過ぎます……」
ぼろぼろ泣くメア。
その気持ちは痛いほどよく分かる。
俺は初めて大切な仲間を失った。
人の死とは、こんなに痛いものだったんだな。俺は馬鹿だった。力に溺れ、完全に浮かれていた。パーティリーダーの俺の責任だ。
だから。
新しい使い捨てのロングソードを抜く。
「……コリーナ、まずはお前をぶっ潰す。その可愛い顔をズタズタにしてやるよ」
「よく言ったわね、最弱剣士!!」
あの指を向けてくるコリーナ。
あれを受けたら即死だ。
うまく攻撃を躱し、一気に接近してコリーナを仕留める……それしかないッ!!!
「たぁあああああああああああああッ!!! シャインブレイド!!!」
『ポキッ!』
「そんなもの、この指輪に掛かれば……」
俺は更にロングソードを抜き、スキルを発動。
「シャインブレイド二連撃!!」
『ポキッッ!!』
「そ、そんな!! 二階連続だなんて……うあああああああああああああああああああああああああああ………………」
白い閃光が二回続き、確実にコリーナを仕留めたはず。これで仇は討ったぞ。だが、視界が晴れると意外な光景があった。
「……レ、レイク兄さん!!」
「……コリーナ、お前は……俺の……可愛くて世界一の……自慢の妹だ」
レイクがコリーナを庇っただと。
ヤツも妹には甘かったか。
瀕死のレイクは、今度こそ倒れ――恐らく死んだ。
「……兄さん、兄さん……そんな。……くっ! イーサン、よくも兄さんを……」
「お前だってアイリーンを殺しただろう。お互い様だ」
「そうかもね。でも、あんなクズな男でも私の兄だった。たったひとりの兄だったのよ」
「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ。アイリーンは、短い時間だったけど大切な仲間だったよ。兄妹愛に負けないくらいにね」
これで決着をつける。