第6話 大聖女のヒール
これは運命か。
俺とアイリーンには何気ない接点があったのだ。なら、コリーナからこの子を守らなきゃな。こんな痣だらけにされるほど暴行を受けたのだ。次は何をされるか分からない。
俺は、メアにヒールをお願いした。
「えっ、アイリーン様……この痣、どうしたんですか?」
「実は……」
事情を話すと、メアは怒りに燃えていた。
「猫ちゃんを守る為に!? それは許せませんね」
「だから、ヒールしてやってくれ」
「分かりました。ヒールですっ」
ぽわんと緑の光がアイリーンの体を包み、回復。一瞬で痣が消えた。
「うわぁ、凄い回復力。ありがとうございます、メアさん!」
「いえいえ、これくらいお安い御用です。これから、一緒のパーティメンバーですからね。仲間を癒すのは当然ですから」
「一緒のメンバー…嬉しいです! 頑張ります!」
当分はメアとアイリーンだけで頑張るか。
ひとり増えただけでも貴重な戦力。
育てていけばきっと最強になるさ。
「よし、じゃあ飯にすっか。俺の奢りだ」
「さすがイーサン様っ」
「先生の奢りですか!」
二人とも飛んで喜ぶ。
俺は可愛い女の子には優しいのだ。
◆
近くの飲食店で食事を終え、再び宿屋『スターロード』。もう夜もすっかり更け、就寝時間も近い。
「あの~、ところで先生」
まだミニスカ学生服のアイリーンが少し困った表情で話しかけてきた。しかし、帝国の学生服は何気にデザインも良くて可愛いし、アイリーンには特に似合っているな。
「どうした」
「先生、もしかして……一緒の部屋で寝るんです?」
「当然だが」
「えっ……でもあの、メアさんもいますし」
「いつも一緒に寝ているけど」
「う、うそー…」
「大丈夫。俺とメアは同じベッドで、アイリーンは空いている向こうを使ってくれ」
そう指示すると、アイリーンは驚愕していた。なんでそんな目で俺を見るんだよっ。
「お二人って、そういう関係なんですか!?」
「そういう関係ってどういう関係だよ。俺はただの剣士。で、メアはただの大聖女」
「ぜんぜんそんな風に見えないですけど……分かりました。では、寝巻に着替えるので……」
「おう」
「いえ、あの『おう』ではなく……」
「お構いなく」
「恥ずかしいのですが!?」
「あー、そうか。分かった……って」
俺の視界が急に遮られた。
メアが手で目隠ししているようだ。
「イーサン様、女の子の着替えを覗き見るとか失礼ですよ」
「これはこれでいいな。メア、そのまま頼むわ」
なんとやっとると、今度は扉がドンドンと激しく叩かれた。
『おい、いるんだろ! イーサン!!』
まさか、この声……!