第5話 魔法使い見習いの少女
パーティメンバー募集を続けていくが、一向に気配はない。やはり、SSS級パーティに入りたがる冒険者はいないか。
誰か、誰でもいい……入って来ないかなぁと願っていると、目の前に人が現れた。……お、パーティ加入希望者か?
「あ、あの……」
なんだか恥ずかしそうにして接近してくる少女。あの服……魔法学校の制服じゃないか。
「もしかして俺のパーティに入りたいのか?」
「はい。私は『アイリーン』と申します。魔法学校に通う魔法使い見習いですが、外の世界を勉強したくて来ました」
腰まで伸びる金髪。
エメラルドグリーンの瞳が美しい。
いやだけど……うーん、手足に痣、か。後で事情を聞くとして……魔法使い見習いか。
「って、魔法使いではないのか」
「そうなんです。見習いでして……お役に立てないでしょうか」
「んー。即戦力を希望しているけどね」
腕を組んで悩んでいると、メアが俺の耳元で囁く。
「イーサン様、この子はかなりの潜在能力を持っております。まだ発揮していないだけで、能力が覚醒すれば偉大な魔法使いに匹敵するかと」
「なぬ!?」
マジかよ。それが本当だとすれば、このアイリーンという子は将来有望だな。まさに金の卵。育ててみる価値はあるかもしれない。
「あの~、ダメですか?」
「あー、うん。いいよ。アイリーンだったね。俺はイーサンという。よろしく」
「イーサンさんですね!」
「あー、それ言い辛いだろう。呼び捨てでいいよ」
「出会ったばかりの方にそれはちょっと……では、私は学生ですから、イーサンさんの事は先生と……ええ、これが相応しいと思います」
先生か。悪くないな。
とはいえ、俺は魔法が使えないし、パーティボーナスでウハウハなくらいだ。まあ、きっとアイリーンは直ぐに強くなる。
パーティ募集を打ち切り、一度、帝国内へ戻った。そのまま宿屋を目指した。
「ここだ。この『スターロード』という宿屋が俺達の拠点となる」
メアと行動と共にするようになってから寝泊まりしている宿だった。お金はざっと一億ベスあるし、しばらくは困らない。
「ここって、結構良い宿屋ですよね。先生、凄いですね」
「いやいや、これくらい普通だって。さあ、こっちへ」
二人を連れ、俺は部屋に戻った。
宿屋の隅にあるVIPルーム。
通常よりもかなり広い空間で、落ち着きがあった。特別な部屋なだけあり、ベッドも二つあるし、お風呂もついていた。
「帰ってきましたー!」
ぴょんと飛び跳ねるメアは、そのままベッドにダイブ。楽しそうにやっとるので、放っておこう。それより、この新人さんだ。
「アイリーン、君に質問がある」
「はい、なんでしょう?」
「その手足の痣だ。何をされた?」
「…………」
困った顔をして黙るアイリーン。
察しはついていた。
この子、いじめられているな。
「強くなって仕返しでもする気か?」
「……違うんです。猫を守る為だったんです」
「猫?」
「同じクラスのコリーナという優等生が猫に酷いことをするんです。だから……許せなくて猫を庇ったんです」
それで痣――か。
魔法使い見習いのアイリーンでは、体で守るしかなかったというわけか。その優等生とかいうヤツ、酷いヤツだな。
「そうか、コリーナな。……ん!? コリーナ……」
どこかで聞いたような名前だ。
記憶を巡らせていくと、あのレイクの顔が思い浮かぶ。あー…、そういえばアイツ、可愛い妹がいると自慢していたな。
――って、まさかああああ……!!
あのレイクの妹かよ!!