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生きた水

作者:

 駅からの帰り道、雨が降り出した。

 傘を持っていない私は今から走ってもどうせ濡れるのであきらめて街灯を反射するアスファルトを歩き出した。

 スーツを濡らすのは少し気が引けたが傘を買う気にもなれなかった。それに今のこの気分を雨なら流してくれるんじゃないかとも思った。化粧が変に広がるのだけが気がかりだった。

 住宅地を抜け、無人の交差点に差し掛かった。すでにスーツの上半分は水が染み込み色が変わっていた。

「死んだ水だ」

 何故その言葉を発したのか自分でも分からないが気が付くと自然と発音していた。

 しかし確かに今、自分は衣類に染み込んだ雨水をみて「死んでいる」と感じたのだ。

 すると今まで気にならなかった濡れた上着も死肉が(ただ)れているように感じた。気分の悪くなった私はさっさと家に帰ることにした。

 家に帰ると蛇口を捻った。洗浄済みのコップに水を注ぐと不快感のこみ上げている喉めがけて流し込んだ。しかしこの水にも生きた気配は無かった。

 この世に生きた水はいないものか。

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