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7.捜索

ずっと続いていた林が途切れて、広場のようなところに出た。


広場には巨石を組んだような跡がある。

自然にできたものではなく、大昔に作られた人工的なものが崩れたようだ。

「お~い。誰かいるか?」俺は叫んでみた。

返事はない。「行ってみよう。」

俺はトンボを構えて岩陰を確認していく。

「真紀、いないの?」優香が幼馴染の真紀を呼ぶ。

ここはなんだろう。特別な感じがする。

怖いとか禍々しいとかではなく、不思議な気持ちになる。

そう、トンネルでバスごと包まれたあの光のように。



もっとじっくり捜索したいがあたりが薄暗くなってきた。

「今日は諦めて戻ろう。」

「でも真紀たちが・・・」

「明日朝からもう一度来てみよう。」

「はい・・・」


俺たちは薄暗くなった林を急いでバスまで戻った。

なんとか戻れた俺たちは、真紀たちは見つからなかったが広場と崩れた巨石のことを話した。


う~ん。みんなあまり元気がない。

それはそうだ。3人も行方不明になったのだから。


キノコもほとんど食べていないようだ。

「どうした、あまりおなかが減ってないのか?」

俺が聞いてみると

楓が「実は・・・」と手にカルメイトを持っている。

ほかの子もソイバーやビスケットなどの軽食やお菓子を見せてきた。

「そういうことか。ならいいけど。」

流石女の子だ。練習試合とはいえバスで1日お出かけならおやつくらいは持っているようだ。

「優香、桜、2人はキノコ食べるか?」

「いえ、私たちも・・・」2人は申し訳なさそうにポケットからおやつを取り出した。

「先生も食べますか?」優香が気を使ってくれたが、

「俺はキノコが大好物なんだ。」と笑顔で答えた。

一人で食べるキノコは、ちょっぴりしょっぱい味がした。


あたりはすっかり暗くなり、食事の終わった俺たちはバスに入り寝ることにした。

真紀たちはどうなったんだろう。

こんなことになるなら分かれて探索などしなければよかった。


真紀たちが戻れない可能性としては、

1. 帰る道がわからなくなり迷ってしまった。

2. 凶暴な動物に襲われた。

3. 怪我をして動けなくなった。

4. 不思議な力で消えた。


どれも可能性がある。ただ、2や3の場合ある程度探せば手掛かりが見つかりそうだ。

1も手掛かりがありそうだが、どんどん離れてしまえば取り返しがつかない。

4の場合はどうしようもないか。今の俺たちがそうだもんな。

明日は、捜索班と渓流班に分かれて行動しよう。

今日はいろんなことがありすぎた。そう考えているうちに疲れもあったのかいつの間にか眠っていた。



翌朝、明るくなると同時にみんなを起こして今日のことを相談する。

マキたちの捜索が一番だが、水と食料も必要だ。

別行動には不安があったが、そうも言っていられない。

「ということで、捜索班と渓流はに分かれよう。桜は渓流班のリーダーとしてみんなを守ってくれ。俺と優香は探索班だ。誰かもう一人探索に」

「先生。私行きます。」美少女菜々美が手を挙げた。

「いいだろう。みんなもそれでいいか?」

みんな無言で頷く。


渓流班には、川からではなく湧水を探して水をくむように指示する。

捨てずにとっておいたカラのペットボトルを全部渡し、カバンに詰め込んでいく。

「桜はバットでみんなを守ってくれ。朱里は昨日のように投石で戦うか。」

桜は自信満々にバットを朱里は無言で石をそれぞれ掲げた。

2人とも準備できてるな。ほかのものもそれぞれ武器になるものを持つ。


「それでは出発しよう。昼の12時にはここに戻ってこよう。何度も言うが、安全第一だからな。」

「「「はい」」」

俺は昨日のようにトンボを担いでバスの後方へ進んでいった。



「昨日の道をたどっていくが、他へ踏み込んだ後がないか注意しながら進もう。」

「先生、昨日話していた広場は遠いんですか。」菜々美が聞いてくる。

「このまま進めば1時間もかからないだろう。」

「私、真紀たちが心配で。」

優香が顔を曇らせてつぶやく。

「そうだな、早く見つかればいいが。」


小一時間ほど歩いて、昨日の広場に出た。

ここまでは、横道にそれたような跡はなかった。

念のために広場の周囲を回りそこから進んだ形跡を探すが、特に見つからなかった。

この広場から出た様子がない。

「ということは3人はこの広場から消えた可能性が高い。」

「どういうことですか。」優香が聞いてくる。

「もしかしたら、真紀たちはここから転移したかもしれない。」

「バスで全員が飛ばされたみたいに?」

「うん・・・」俺も自信がないからはっきりと答えられない。


「巨石のあたりを調べよう。」

幸いこのあたりには動物の気配は感じられない。

「これもしかして鳥居だったのかな。」菜々美の問いかけにそちらに注目する。

確かに左右に柱となるような長めの石が転がっている。ほかはバラバラに散らばっているが。

「ここは神社だったのか?そうするとこの奥が拝殿なのか。」

大小の石が重なり合った拝殿らしきあたりを詳しく見る。

神社ならご神体が祀られているかもしれない。


拝殿跡を観察しながら一周する。特に変わったものはないようだ。

「先生、奥で何か光ってる!」優香が石の隙間を覗きながら叫んだ。

優香のほうへ駆け寄ろうとすると、石の隙間から光のボールのようなものが浮かんできた。

俺はトンネルの中で見た不思議な光を思い出す。

「優香、離れろ。」

俺の言葉を無視するように優香は光を見つめて動かない。

「優香先輩!」菜々美も慌てて駆け寄る。

光はだんだん大きくなり、優香を飲み込む。

「優香!」「先輩!」

俺は優香の手を掴んだが、同時に目の前が真っ白になった。


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