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21.全快

お殿様の治療を始めて、1週間が経過した。



お腹の悪い出来物も消えてお殿様も全快した。

敷地内だが、もう散歩もできるようだ。

後は体力の回復を待つばかりだ。

優香たちはお殿様にたいそう気に入られていた。

治療の後半はお殿様とおしゃべりしたり笑ったりしていた。


お殿様の病気は癌だったと思う。しかも末期だ。

これを治してしまったのだから正に奇跡といえるだろう。



お殿様は優香たちに町への移住を希望した。是非にということだ。

お殿様のバックがあれば申し分ない。

優香たちも安全や身分が保証されるなら願ったりだ。

河田奉行や宮司の河田さんと相談し、この町に住む話が進められた。


お殿様は俺のことはいらなかったようだが、優香たちが一緒でないと嫌だといってくれた。

それならということで俺も仲間に入れてもらえた。

いいお殿様でよかった。優香ありがとう。(涙)

しかし本当に金魚の糞になってしまったな。




お爺さんのところを出てから10日はたった。

残してきたみんなも心配しているだろう。

報告のために一度前の家に戻ろることになった。


と言っても神社間なら転移の術でひとっ飛びだ。


「ただいま。遅くなってごめんな。みんな大丈夫だったか?」

「おいおい、遅いよ~。そっちも元気だったか?」

理央が笑顔で出迎えてくれた。

お土産のお米と太鼓饅頭を渡す。

よし子さんとゆうき君が喜んでくれた。



こちらは特に変わりがなかったようだ。

俺たちはお殿様の病気のことや、由美さん、姫豊神宮、町のことなどを話した。

町への移住の話をするとみんな大賛成だ。


このまま準備して今日のうちに出発しようということになった。

「当り前だろ。終わったらみんなを連れていく約束だっただろ。」

「うん。今度は一緒に行こうね。」真紀も嬉しそうだ。


お爺さん、お婆さんは少し寂しそうだ。

半年ほどだけど一緒だったのだ。寂しいわけがない。

でも今は娘のよし子さんと孫のゆうき君がいる。



俺たちは少ないけど荷物を纏める。


「お爺さん、お婆さん、長い間本当にありがとうございました。」

「お前たちは若い。これからじゃ。お殿様のために、姫豊藩のために、そして自分たちのために、頑張るのじゃ。」

「いつか元の世界に戻れるといいの。」

その気持ちも心の底にしまってある。いつかはみんなで戻りたい。

「お婆さんもありがとう。

巫女服も早速役に立ったのよ。これからも大事にします。」



みんな神社まで見送りに来てくれた。

「じゃあ行ってくるよ。爺さんも元気でな。」

理央は特にお爺さんにかわいがってもらっていたのだ。

「おう、お前もな。」

「また遊びに来てやるよ。」


俺たち10人は姫豊神宮へ転移した。

爺さんは前に理央にもらったマスコットを見つめた。




「へー。ここが姫豊神宮か。爺さんの家とはえらい違いだな。」

後発組5人はきょろきょろしている。

「まずは玉田さんと由美さんに挨拶しよう。」


「玉田さん、新しい5人が到着しました。

理央、楓、芽衣、朱里、富美です。」

「姫豊神宮、宮司の玉田です。いやーまたかわいらしいお嬢さんがただ。

これだけの娘さんが揃うと、壮観ですな。」


「お言葉に甘えて全員でやってきました。

この子たちのこと、よろしくお願いします。」

「「よろしくお願いします。」」

「うん、これは新しい時代の幕開けですな。

今まで手が足りずにできなかったことも出来るようになるでしょう。

みなさん、こちらこそよろしくお願いしますね。」


「こんにちは、由美です。巫女の先輩として、なんでも相談してくださいね。」

由美さんが自信を持った笑顔で自己紹介した。


「由美さん、最初にあった時と全然違うね。」「あの時は死にそうな顔をしてたもんね。」

「もうやめてくださいよ。あの時はほんとにどうしたらいいかわからなかったんだから。」

由美さんも明るくなってよかった。巫女10人衆だな。


「ではお風呂の用意をしますね。部屋で待っていてください。」

「あーお風呂か。こちらでは一回も入ってないぞ。半年ぶりだな。」

「うー。すっごい楽しみ!」

「ここのお風呂はおっきいから気持ちいいわよ。」

「ちっ。お前らだけ先にいい思いして。」

「でもその分、お殿様の治療が大変多だったんだから。

うまくいったからよかったけど、下手したら牢屋行きだったかも。」

「そういう意味ではお前らのおかげだな。ありがと。」


その後、お風呂の用意ができて全員で(もちろん女子だけ)お風呂に入った。

久しぶりだったのでかなりの長風呂だった。


「あ~生き返ったな~。やっぱり風呂はいいな。」

「これからは毎日は入れるわよ。」


晩御飯の時間だ。

今日は白米とお吸い物、メインは天ぷらだ。野菜や鶏肉が具材になっている。

「わ~。すごい豪華じゃないの。みんなこんなの食べてたの?」

「いや、天ぷらは初めてだ。でも毎回おいしいのが出てくるな。」

「やっぱりずるいよー。」


「ははは、みなさん、たくさんあるからゆっくり召し上がってください。

それと、明日からですが早速巫女としての仕事をお願いします。」

「玉田さん、具体的にはどんな仕事ですか。」

「はい、やはり病気や怪我の治療が多いです。

後は季節の神事など、行事ごとですね。

地方の神社にもいってもらいます。」

「かなり遠いですか?」

「もちろん遠方もありますが、転移の術で行けますので。」


由美さんは主だった地方神社も転移経験がある。

最初は由美さんについて転移しすればその後は自由に行き来できる。


「まずはこの姫豊の町で待たれている患者さんたちを診てもらいます。

今まで由美もお殿様で手いっぱいで、他の患者はほったらかしでした。

沢山の方が、治療を待っています。期待していますよ。」

「うーん。アタシにもできるだろうか。」

「私でも出来たのよ。理央もできるわよ。」

「そうだな、いっちょうやってみるか。富美も頑張れよ。」

「はい・・・ごはん・・美味しいです。もぐもぐ・・・」

「なんだ~富美、わかってるのか?」

ははは。笑顔がこぼれる。


「それと、ここでの生活は由美さんばかりに任せてはいけない。

みんなで協力して一緒にやっていこう。

由美さん、みんなに教えてやってくれ。」

「でも先生、それくらいなら今まで通り私がやりますよ。」

由美さんはみんなに倣って俺のことを先生と呼んでくれる。


「だめよ、由美さん。私たちもここで住む以上はもうお客さんじゃない。

当番を決めて順番にやりましょう。でも最初は教えてね。」

「ありがとう優香さん。それじゃお願いしますね。

それと、私も今日から皆さんと一緒に寝てもいいですか。」

「もちろんいいわよ。当り前じゃない。

じゃあ、今日から由美って呼ぶわね。私のことも優香と呼んで。さん付けは無しよ。」

「はい、よろしく、優香?」

「こちらこそよろしくね。由美。」


「おいおい、お前らだけそれは無いだろ。全員名前呼びでさん付けは無しだ。」

「じゃ、私もさん付け無しで<理央>って呼べばいいんですね?」

「いやいや楓、そこは<理央先輩>だろ。お前は結構図々しいよな。」

「普通ですよ。仕方ない。理央先輩でいいです。

でもここは異世界だっていうのは私の当たりでしたよね。」

「あの時のことまだ言ってるのか。まあ、異世界と言えば異世界かもな。

ステータスとかないけどな。」


「でも魔術はありますよ。転移の術とか回復の術とか。」

「まー魔術と言えないこともないかな~。楓は異世界にこだわってるな。」

「それはもう大好きですから。そのうちファイアーボール打っちゃうかも?」

「はいはい。まあ頑張れ。」


「なんですか?異世界とかステータスとか?」

由美は何のことかわからない。

「前に住んでたところのアニメやゲームでそういうのがあったんだよ。」

「アニメ?ゲーム?」

「まあ、おいおい教えてやるよ。ここのことも教えてくれよ。」

「はい任せてください。理央さん・・理央。」

「おう由美」

初めはぎこちなくても少しづつ慣れていくだろう。


こうして俺たちの姫豊での暮らしが始まった。


よろしければ下のほうのボタンを押してください。間違えて押してしまったとしてもかまいません。

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