表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/44

18.町への旅路

約束の1週間が過ぎた。

今日は迎えの馬車が来る日だ。

準備はできている。といっても特に何もないが。

ただ、お婆さんから巫女の衣装一式を借りてきた。

向こうで用意できると聞いていたが、お婆さんの気持ちだ。ありがたく受け取っておく。


桜は同行に了承してくれている。

メンバーは優香、真紀、桜、菜々美そして俺の5人だ。

他のメンバーも町に行きたがったが、今回は止めた。

町の様子を見て安全そうならみんなで行ってみようということになった。

一度行っておけば転移の術も使えるだろうし。


ほどなく迎えの馬車が到着した。


奉行様と家来の2人は馬でやってきた。

「健太殿、この度は無理を言ってすまぬ。少し馬を休ませて昼までには出発するぞ。」

「はい、大丈夫です。」

お爺さん、お婆さん、他の子も見送りに集まってくれた。

「みな美しい娘たちばかりじゃ。しかも全員巫女の力があるのか。これだけ集まると壮観じゃな。」

「みんな自慢の娘たちです。」


早めの昼ご飯をとってそろそろ出発になった。

「みんな、行こうか。」

「「はい」」


季節は晩秋。日が差せば温かいが、朝晩は冷える。

馬車には幌が付いていて雨風は凌げる。

御者の男が2頭立ての馬を操る。

家来の二人が馬車の前、奉行様が後ろを守る。

馬車はゆっくりと進んでいった。


道中、何かあれば御者にいうように言われている。

御者の男は30代だろうか。髷を結っているは、着物は簡素だ。下級武士というところだろう。

女子たちは何でもないことで、キャッキャと盛り上がっている。

俺は情報が欲しいので、御者に話しかけてみた。


「お役目ご苦労様です。今から向かう町はどんなところですか?」

「そうさのう。いい街じゃの

藩主の池田様は立派な方だし、姫豊城は自慢のお城じゃ。

お城見たさに、よその藩からも見物にくるものがたくさんおる。

城の周りは茶屋や土産物屋でにぎわっておるしの。

年貢も低いから町民、農民の生活も安定しておる。」

「そうですか、いい街のようですね。」


「ワシは後ろに居られる河田奉行殿に仕えておるが、奉行殿がまた良い方じゃ。

落ちぶれて食い詰めておったワシを拾ってくださった。

おかげでこうして働かせてもらえとる。」

「それは良かったですね。」


藩主様も奉行様もよい方で間違いないようだ。

これならめったなことにはならないだろう。

この世界に巫女が必要で呼ばれたのなら、俺はこの娘たちを守っていこう。



「この先に休憩小屋がある。今夜はそこで休む。」

大里村の時もそうだったが、この世界の街道沿いには休憩小屋がある。

移動は基本的に徒歩なので、休憩小屋は必要だ。


小屋に着いてすぐに夕食の準備にかかる。

御者と俺と菜々美が担当する。

俺は持ってきていた干し肉や干し芋を出した。

御者も食材を出してきて一緒に調理する。


といってもスープと干し芋の焼き芋だ。

御者の食材も似たようなものだが、玉ねぎや人参など日持ちする野菜が追加された。



「さあ、できたぞ。」

まずはお侍様からだ。俺たちは少し離れて食事をとる。


「このあたりは夜は危ないのでしょうか?」

食後のかたずけをしながら御者に聞いてみる。

「鹿やクマが襲ってくることがある。しかし本当に怖いのは盗賊や山賊じゃ。」

やはり一番怖いのは人間か。

日本でも昔は山賊が出ていたそうだ。


「おぬしたちは小屋を使うといい。ワシらは交代で見張りをしながら馬車で寝ることにする。」

「ありがとうございます。」

女子たちの安全を優先してくれるのはありがたい。

俺も見張りを買って出たが、断られた。

何かあっても俺では対処できないしな。

優香たちと一緒に小屋で休ませてもらった。


「みんな、大丈夫だな?」

「はい、元気で~す。」さすが桜、一番元気だな。

「先生、この世界は昔の江戸時代に似ていますね。」

「そうだな、藩や奉行、侍、お城。確かに戦国か江戸時代に似ている。

でも巫女の不思議な力なんてなかったはずだし、馬車も明治以降のはずだ。

やはり日本ではないんだろうな。」


「こういうのパラレルワールドっていうんじゃないですか。」菜々美の意見だ。

「よく似てるけど違う世界。並行世界か。そうかもしれないな。」

「私たちどうなるんだろ。元の世界には戻れないのかな?」

「それは誰にも分らない。いや、神様ならわかるかもしれないな。

この先巫女を続けていけば何かヒントがあるかもしれないぞ。」

「お告げとかですか。」

「そうだな。」

確信が無いのではっきり言えないが、この世界に飛んできたのは神様の力だろう。

元の世界に帰れるとしたらやはり同じ力が必要なはずだ。


「どちらにしろ、お前たちのことは俺が守る。安心しろ。」

「え~先生に守れるかな。先生のことは私が守るから。」

桜さん容赦なし。「よろしくお願いします。」


「さあ、もう寝よう。」

ひとしきり笑ったので気持ちよくなることができた。



「おはようございます。」

朝、小屋を出ると、お侍さん4人はもう起きていた。

火は一晩中焚いていたので、御者はその火を使って朝食の準備をしていた。

俺も手伝う。

「昨夜は何もなかったですか。」

食事の準備をしながら御者に聞いてみた。


「ああ、大丈夫じゃ。穏やかな夜じゃったよ。」

「そうですか、おかげさまで私たちもゆっくり休めました。」

「それは良かったの。さあ、飯にしよう。」


天気もいいし、山賊も出ない。馬車の旅は快適でスムーズだった。

その日も夕方まで距離を稼ぎ、街道沿いの小さな町に着いた。

お城のある城下町ほどではないが、小さいが店や食堂を兼ねた宿屋もある。

今晩はここで泊まるらしい。


「あー疲れた。特にお尻が痛いな。お前たちはどうだ。」

「どうだってお尻のことですか~。それってちょっとエッチです。」

心配して聞いているのにエッチかよ~。でも冗談で言っているのがわかっているのでどうということは無い。



家来の2人が宿に入り、部屋の空きを聞いている。

「4人と5人の2部屋で頼む。」

食事にこだわらなければ泊まれるらしい。

もちろん、それでいい。


「すぐに風呂を用意します。しばらく部屋でお待ちください。」

女将さんに部屋に通された俺は畳に寝ころんで腰を伸ばした。

「う~ん。馬車も結構疲れるな。」

「先生ずるい。私も。」菜々美が隣で寝ころぶ。

「ええい待ってよ」みんなで寝ころんだ。

「あ~気持ちいい。」ふと隣の菜々美と目が合った。

「なんか不思議ですね。」「そうだな。」


異世界に飛ばされて、お爺さんたちに出会って、大里村に行って、今度は藩主様のいる姫豊城を目指している。


今度は桜と目が合う。

「先生、けっこう楽しんでるんじゃない?」

「えっ、う~ん、どうだろう?」

「ハーレム状態だし。」

おい、桜、先生をからかうんじゃない!


「先生結構純情だね。」桜にはかなわない。

「そうだな。みんながいてくれて俺は幸せだ。」

「えへへ~。」

なんとなくいい雰囲気になった時、女将さんからお呼びがかかった。


「お風呂が沸きました。先に殿方から済ませてください。」

現代日本ならレディーファーストだが、この世界では男のほうが上なのだ。

「悪いけど、先に行ってくるよ。」

「「は~い」」


風呂に行くと奉行様一行が先に入っていた。

「一緒に入らせてもらっていいですか?」

失礼に当たるかもしれないので一応聞いてみた。

「ああ、よいぞ」


自分の屋敷では上下関係が厳しいだろうが、旅先では細かいことは言っていられない。

同じ湯に浸からせてもらった。


「ああ、気持ちいい。何か月ぶりだろう。」

こちらの世界に来てからは初めてのお風呂だ。

温かいお湯が身に染みる。


「姫豊の町では家にお風呂はあるんですか?」俺が聞いてみると

町民や農民の家には風呂は無いらしい。

武士の家や大きな商家ならあるそうだ。

ただ町には公衆浴場があり、風呂の無い家の人もたまに楽しむことができる。


シャンプーは無いが、石鹸はある。頭の先から足先まできれいにしてさっぱりできた。


その後女性陣が入浴し、出てきたところで食事となった。

寝室ではなく、大広間での食事だ。

「なんもありませんが、召し上がりください。」

なんと白米が出てきた。これも数か月ぶりだ。

ごはんとみそ汁、漬物と野菜の煮つけ。


豪華ではないが十分なご馳走だった。


「お米があるんですね。」俺がつぶやくと

「おぬしのいたところは近くに川が無いので水が引けないのじゃろ。稲作には水が欠かせぬからな。

姫豊の町の周りは田んぼが多くあり、米が良く取れる。町では白米が主食じゃ。」


奉行様の説明で納得した。芋もおいしかったが少し飽きが来ていた。

やっぱり白米が旨い。

食事も堪能できた。


「この調子なら明日の昼過ぎには町へは入れよう。今晩はゆっくり休むといい。」

「はい、ありがとうございます。お奉行様も。おやすみなさい。」




部屋に戻ると布団が敷いてあった。せんべい布団だが、シーツは清潔そうだ。

「私ここがいい。」「じゃあ私はこっち。」場所取り合戦だ。

「先生はどこに寝るの?」菜々美が聞いてきた。

「残ったところでいいよ。」


なぜかど真ん中が残った。

両隣は優香と菜々美。

優香は笑顔と巨乳が眩しい。菜々美はモデル級の美少女だ。

俺は目をつぶり頭の中でお経を唱える。

間違いがあってはいけない。今晩もつらい修行が続くのだ。


面白ければポチッとお願いします <(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ