12、大沢優香、山口菜々美
私は大沢優香、高校2年生だ。
周りのみんなは私のことを”真面目”だと言う。
そうかな、普通だけど。
おかげでが委員長にされちゃったけど。
投票だったから、断れなかったのよね。
ソフトボール部でも部長をしている。
前部長の山田先輩に指名されて、みんなも納得していた。
別に嫌じゃないけど、いろいろと雑用が回ってくる。私も自分の時間がほしいし。
私、将来は保母さんが幼稚園の先生になりたいのよね。
甥っ子のユウマはちょっと生意気だけどかわいいの。
ユウマは姉さん子供で3歳の男の子だ。
姉さんがうちに度々帰ってくるので、私にもすっかり懐いている。
私にもいつか子供ができるんだろうか?
将来のことをぼんやり考えながら、
「今は現実を見なければ」と切り替える。
今日は巫女の衣装を着て神楽を舞った。
元の世界に帰るためだ。
でもだめだった。その後、真紀が試したがやはりうまくいかない。
簡単には帰れそうにないな。
お爺さん、お婆さんのおかげで食べるものや寝るところは確保できた。
もう寝る時間だ。みんな一緒に・・・先生も。
でも、間違いがあってはいけない。
先生は優しいけど男性だ。「男には気をつけなさい。」とお母さんや姉さんから聞かされていた。
もちろんそれくらい私でもわかっている。
だからここは私がみんなを守るのだ。
「先生の隣には私が寝ます。」私が声を上げた。
菜々美も先生の隣に寝ようとするが、2人に何かあってはいけない。
でも最後には理央が強引に場所を取った。
仕方ない。喧嘩はしたくない。
何かあれば、すぐに起きれるように私は真紀の隣で眠りについた。
「ちょっと残念だったかも。」
なぜかがっかりしている自分に驚いた。
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~ここは私が寝ようと思ったのにな。
山口菜々美は先生と理央先輩の背中を見ながら考えていた。
私は山口菜々美、高校1年。誕生日がまだなので15歳だ。
私は小さいころから「可愛い、可愛い」と言われて育ってきた。
自分でも可愛いほうだと思う。
お母さんは独身の頃、地元のミスなんとかに選ばれたことがあるらしい。
昔はミスコンていうのが流行っていたのだ。
私はお母さんに似たようだ。
少し前に友達と街を歩いていたら、「モデルになりませんか」と声を掛けられた。
最初は疑っていたけど、有名な少女向けのファッション雑誌だったので「写真だけなら」とOKした。
このまま街角でスナップ写真を撮るだけだという。
もちろん友達も一緒にいてもらった。
雑誌に載った自分の写真を見ると新しい世界が開けたような気がしてワクワクした。
~将来はモデルさんになれたらいいな。
私は特定の彼氏はいない。告白されたことは何度かあるけど。同年代の男の子は子供っぽくて好きになれない。
でも、先生のことは少し気になっている。特にイケメンとかじゃないけど、優しくて包容力がありそうだ。
こんな世界に来てしまって、不安だからかもしれないが、先生のそばにいると安心できる。
もしかして私ってファザコンかブラコン?
自分でも自分の気持ちがよくわからない。
先生も私といると嬉しそうにしたり、ドギマギしたりで満更でもないと思うのよね。
もっと先生のそばにいたいけど、先輩がいるときはあまり近づけない。
先生の隣になりたくて寝る場所を主張したけど、先輩には逆らえない。
~仕方ないか。またチャンスを待とう。
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~う、うれしいけど悲しい。
寝る場所で、優香たちが俺の隣を争っている。
~これはモテ期が来たのか?
場所取りは俺が決めるわけにもいかず、関心が無いように視線を外すくらいしかできない。
最終的に理央に決まったようだ。
俺はちらりと理央に目を向けてぎょっとした。
理央は俺のほうを見てバットを両手でつかみこちらを見ていた。
理央は目が合うと恥ずかしそうに顔を背けた。少し頬が赤いようだ。
そしてそのまま後ろを向いて寝ころんだ。バットを握りしめて。
~理央は遊んでいるようで、案外純情なのかな?
最近頑張っている彼女の背中を見て、俺は少しうれしくなった。
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