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マスクをつけないのはダメなんですか?

あるところに、ごね太郎という男がいました。

彼は中学を卒業した後、40を過ぎても働きもせず、親に養ってもらいながら一日中自室に閉じ籠り2chのレスバを満喫していました。

彼はSNSで同級生をフォローしては、彼等の充実した生活の投稿を見て心を痛め、いつしか彼等を憎むようになりました。

あいつらも外に出れなくなればいいのに…

2chにしか居場所のない彼はそう思うようになっていきました。

そんな彼の願いを神様が叶えてくれたのでしょうか、新型コロナウイルスの流行により世界中がstay home(家にいろ)というスローガンを掲げ、外出を自粛するようになりました。

しかし、あまのじゃくな彼は皆が外に出れなくなると逆に自分が外に出たくなりました。

ちょうどその時、旅行会社や航空会社が割引キャンペーンを行っており、10万円の給付金がもらえるときいていたので母親に

「おいババア、給付金の10万円よこせ」

といったところ、

「ふざけるんじゃないよ今まで家に金をいれたこともない穀潰しが!この金はあんたの今までの生活費として家計にいれます。あんたにあげたところでろくな使い方しないんだから。とにかく、あんたにあげる金はありません!金がほしけりゃバイトなりなんなりして自分で稼ぎな!」

「んだとこのやろう!ふざけんじゃねえ。ぶっ○してやろうか。10万よこせよこせよこせー!」

ごね太郎は腹をたて、我を忘れて暴れ回りました。

育った環境が悪かったのか、はたまた本人の素質の問題か、彼には自制心というものが備わっていませんでした。

彼は家の食器や窓ガラスを手当たり次第に割り、母親に殴りかかりました。

ガチャン パリン

「いやー!やめてー!誰か助けてー!」

「うるせえくそババア!死にてえのか!」

ボコ ドス ガシャン

1時間もしないうちに家には割れたガラスや食器の破片が散乱し、空き巣に入られてもこんなに荒れはしないだろう…というくらい家がメチャクチャになってしまいました。

母親は床にたおれこんだままピクリともしなくなってしまい、とても金のありかを聞き出すことのできる状態ではありません。

そこでごね太郎は母親のハンドバッグから財布を取り出し、その中にあるお金をすべてもらうことにしました。

「5万円か…まあ割安になってるみたいだし節約すればなんとかなるか。」

彼はそう言い残し、グチャグチャになった家を後にしました。


まず、彼は行き先をどこにするかを考え始めました。

「どこにすっかなー。ん…これは…」

彼の目に沖縄の観光地の広告が入ってきました。

考える材料も知恵もない彼はすぐに行き先を沖縄に決めました。


「アノ…エト…オキナワ…ヘノ…チケット…エト…1枚…エト…ク,クダサイ」

「(なんだコイツ…)はい、那覇空港行きの航空券ですね!少々お待ち下さい」ニコヤカー

彼はどうしようもないコミュニケーション能力を駆使してドモり、キョドりながらなんとか沖縄行きの航空券を手にいれ、飛行機に乗ることができました。

「お客様、マスクをご着用くださいますようお願い申し上げます。」

乗務員がごね太郎に話かけてきた。

ごね太郎はマスクを持っていない。

このご時世、外出時にマスクを着用するという暗黙のルールがあるのは周りを見ればわかるはずだが彼には周囲のことをきにかけるといった概念が存在せず、また空港内で散々アナウンスされていてもそれらすべてを聞き流す当事者意識の無さが彼に「マスクを持たない」という奇行を可能にさせたのだった。

そんな自己中心的でプライドだけは人一倍な彼は自分が注意されたことに腹をたてた。

「なぜマスクをしないといけないんだ。」

「感染対策です。ご自身が感染されないため、また他の乗客に感染させないためご協力お願いします。もし体質などてマスクをされるのが難しいのであれば別の席に移っていただくことも可能ですがいかがでしょうか?」

「他の人に感染だと!?お前は俺を病原菌扱いするのか。大体マスクで感染が100%防げるのか?防げるわけないだろう!俺はマスクもしないしこの席からも動かないからな!」

ごね太郎はゴネ始めました。

乗務員がなんとかなだめてマスクをつけるよう何度も指示しますがごね太郎は聞く耳を持ちません。

困り果てた乗務員はごね太郎が説得不能な上、マスクの着用を求める度に大声でわめきたてるため他の乗客の迷惑になっていることを機長に伝えたところ、機長は一旦中部空港に緊急着陸し、彼を降ろすことに決めました。

ピンポンパンポーン

「当機は中部空港に緊急着陸することにいたしました。乗客の皆様にご迷惑おかけして大変申し訳ありません。ご理解の程よろしくお願いいたします。」

ピンポンパンポーン

「なんだ緊急着陸って、燃料でも足りなくなったのか?笑」

まさか自分のせいだなんて想像すらしていないごね太郎はこのアナウンスをせせらわらっていました。


そして、機体が中部空港に着陸し、乗務員がごね太郎の元に来て「お客様、ルールを守れないのであればここで降りてください。他の乗客の迷惑ですので。」

自分が航空会社のルールを破っていることは棚にあげてごね太郎は憤慨しました。

「俺は客だぞ!マスクをしないだけで降ろされるなんて冗談じゃない!訴えてやるからな!」

しかし、もうこうなってしまった以上、乗務員は聞く耳を持ちません。力ずくでごね太郎は機体の外に追い出されてしまいました。

「絶対訴えてやるからな!あとこのことはSNSに晒すからな!覚悟しておけよ!」

ごね太郎のその捨て台詞は沖縄に向かって飛び立っていった飛行機の中までは届きませんでした。

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