3話Part2 修学旅行初日、初めて降り立った北の大地
バスに乗り込んで広島空港まで数時間、広島空港から直行便で2時間ほどで、僕たちは新千歳空港にたどり着いた。空港で荷物の受け取りや点呼を済ませると、修学旅行で最初の目的地であるサイロ展望台へと向かうため、バスへと乗り込んでいく。
北海道組で集まっていろいろ説明を受けていた頃からずっと冬用の上着やなんかを持ってくるように指導されていて、なんでなんだろうと考えていたのだが、バスに乗り込もうと国内線ターミナルなら外へと一歩踏み出した瞬間、その理由を思い知らされることとなった。
「さ、寒っ!」
そう、5月の北海道はとても寒かったのだ。
「寒いな春風希……」
横で龍勢も寒そうにしている。
今日千歳では雨が降っているというのも多少は影響しているだろうが、それにしても寒い。僕らは北の大地をなめすぎていたのかもしれない。そう思いつつ、僕はバッグから手袋を取り出し、荷物をバスに乗せると足早にバスに乗り込んだのだった。
「まもなくサイロ展望台に到着します」
新千歳空港から1時間半、バスの添乗員さんがサイロ展望台に着いたことを知らせた。バスから出た僕らを迎えたのは、霧で見通せない洞爺湖と、5月の寒い空気だった。
「視界悪いな……」
これはこれでいい記念になるのかもしれないが、せっかく来たなら見通せる天気であってほしかったように思う。
「寒いし自分は先に中見てくるわ……」
見通せない中でも友達と写真撮影に勤しむ龍勢にそう告げると、僕は併設されているお土産屋さんの店内へと足を踏み入れた。
店内を見ると、あちらこちらに北海道名物が見受けられた。□い恋人や〇セイバターサンド、木彫りの熊など、自分もお目当てにしていたものがたくさんあった。そんな中、僕の視線はある一つの物に奪われた。
「えっこれって……」
竹刀とは違う重さのありそうな、木でできた刀。それはまさしく木刀だった。
「木刀ほんまに売ってんのか……」
実際に持ってみていろいろ質感などを確かめてみる。
「あれ、これ洞爺湖ってあるぞ」
よく見てみると、木刀の側面に洞爺湖の文字があった。
「これ絶対あれじゃん……△魂関係あるやん」
某週刊誌の漫画、△魂の主人公が持っている木刀と似ているこの木刀。よく見ているアニメの主人公がこんな重いものを振り回していると思うと、やっぱり主人公はすごいなと感じたのだった。
その後、一通りお土産を見て回った僕は、サイロ展望台から出発する時間が近づいているのを確認して外に出た。外ではまだ写真撮影している人がチラホラいたが、バスを降りて僕が店内に入るまでよりは確実に少なくなっていた。寒くてみんなバスに乗ったのだろう。
「あっ、春風希~!写真撮ろうや!」
自分もバスの方向に向かっていると、まだ写真撮影していた龍勢が声をかけてくる。
「ああ、けど寒いから早くしよう……」
先程確認したサイロ展望台周辺の気温は10℃程度。学生服(冬服)を着ているとはいえなかなか厳しい外の空気にさらされつつも、手短に写真撮影を終えると、僕らはまた再びバスへと乗り込んだ。
「次は昭和新山か……」
バスに飛行機にまたバスにと、長旅にも関わらず生徒や先生たちは元気いっぱいで、バスの中はこれからの期待で満たされていた。
そんな中、バスは次なる目的地である昭和新山・有珠山へと走り出したのだった。
[3話Part3に続く]
北海道のお土産と言えば、やっぱり白い恋人は外せないね。