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プロローグ 名をつけるというのならば……
伝記、史記、それとも、物語……。この事を記すにあたって、幾度となく考えた。どの様に伝えれば、一番広がるのだろうかと。
先月新たになったこの国の書士官長としての初仕事として、真実を記さなければいけない。しかし、どうしても、多くに伝えるには、創作のように感じてしまう方が市井に残りやすいのは、否めないのだ。
一ヶ月前まで、私は資料整理員に雇われただけの末端も末端に過ぎない男爵家の三男で、大きな事柄は流石に世界的な規模だった事もあり分かってるものの、真実の大半よく理解していないというのもある。
本来ならば、この様な大抜擢などあり得ないのだが、この国の数カ月前に、上流階級はほぼ居なくなった。……これはまあ、事の大きさを見れば、当然であった。むしろ、我が国はあれだけの事をやったにも関わらず、あのお方のお蔭で幸運であった。
――――ああ、そうだ。
昨今、市井では、聖人様、聖者様と、あの方々の事が持ちきりではないか。
書の題が決まった。
―――王宮書士官長、ヘルリック・ムートヴィレイン伯爵の日記より