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動きのない世界  作者: ユウスケ
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電話

死を意識するようになったのはここ最近のこと、きっかけは多分友人の死だと思う。


大学時代に知り合いそのまま社会へと出た後も頻繁に共に時間を過ごしていた仲。人生の中ではまだまだ長いとは言えない時間だが、その数年でお互いの情報はほとんど知り合うようになっていた、そう思っていた。

実際のところ、俺は彼のことを何も知らなかった。知っていたのは表面だけ、頭の中は当時も今も何も分かっていなかった。


大学を卒業し社会へと出てから約2年が過ぎた頃、変えたばかりの新品のスマートフォンに知らない番号から電話が来た。それがフリーダイヤルなら取ることはなかったが、画面に映し出されたのは携帯電話の番号だった。

電話の相手は女性、綺麗な声をしているが話し方から40代かそれ以上であることが分かった。知らない番号はそれだけで不信感を覚えるもの、相手に覚えがなければなおさら不信感は募る一方である。


その女性はまずこちらの名前の確認をした。「はい」その一言を聞いた後、女性はよく知る名前を口にする。来週会う約束をしていた彼の名前だった。

そこからは断片的にしか思い出せない。「母親、昨日、浴槽、死」。その言葉がその通りに女性の口から出てきたのか定かではない。スマホで音声を録音していたわけではないので、今となっては正確な話を確認することはできない。しかし確かなのは彼が亡くなったということ。それが全てだ。


死を決断するのに早いとか遅いとかそんなものは誰が決めるのだろうか。不思議なことに彼が亡くなったという事実をたったの3日で受け入れている自分がいた。

葬儀には出席した、彼の家族にも挨拶をした、親しい友人が死んだという事実については会社も理解ししばらく休むように言ってくれた。


しかし涙を流すことはなかった。だから4日目には会社へと向かった。

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