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プロローグ
この世界にはたった一人を除いて誰もいない村がある。正確には”以前までは村だった”場所。今では廃墟が立ち並び、空気もどこか重苦しい。
そこにいるのは一人の人間。紛うことなき人間である。この村の出身ではない一人の人間。
しかしこの場所へとやって来た際にこの村を破壊してしまった。なんの恨みか、はたまたなんの考えも無しなのか、いずれにせよ大きな力を持っているのは間違いない。
その人間の姿を見た者はこの世界には数少ない。そして数少ない姿を見た者は揃って彼の言葉を耳にする。
”どうしてわらっているのか どうしてしあわせなのか どうしてこえがきこえないのか”
その言葉を耳にする者はいても、言葉の真意を知る者はいない。そして彼の姿を目にした者も今ではどこにいるのかも分からない。
そんな村からそう遠くない森の真ん中である日まばゆい光が放たれる。光の訪れと共に村で唯一の人間がゆっくりと動き出す。これが物語の始まりになる。あくまでももう一人の人間の物語の始まりである。