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おれ、異世界へ行く。  作者: 竜馬(たつま)
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第四話 おれ、ゴブリンをあしらう。

 さて、どうしようか。


 これからの方針を固めたはいいが、目の前の問題を先送りにしていた。


 あまりにも空振るせいか、ゴブリンはかなりいら立ちを募らせているようで目を血走らせている。


 怒髪天を衝く勢いで、最初よりは動きが良くなったがそれでも大したことはない。


 このままではどうしようもない。


 こいつはおれを殺すまで止まることはないだろう。


 だが、おれもそれを甘んじて受け入れるわけがない。


 であれば、おれがこいつを止める、つまり殺すしか手はない。


 命を奪うという行為に多少の忌避感はあるものの、自分が生き残るためならばしょうがない。


 人は突き詰めれば誰もが利己的なのだ。


 それにこいつはどう見ても人間じゃない。


 人を殺すことには抵抗があるが、それ以外なら別だ。


 人以外ならば小さな羽虫を殺すことと大差はない。


 おれの考えに異を唱える者は多くいるだろうが、これがおれのやり方だ、口出しはさせない。


 そうと決まれば話ははやい。


「くたばれ」


 そう言い終わるが早いか、おれは手に持っていた木の枝を全力で振るってゴブリンの側頭部をとらえる。


 風を切る音がした後に、グエッという小さな呻き声が聞こえてゴブリンが吹き飛び、木へと激突して停止した。


 木の枝は半ばから折れていてその衝撃を物語っている。


 何を隠そう一番びっくりしているのはおれだ。


 もし木の枝が力に負けないほどの強度であったならば?


 ゴブリンの頭はスイカが弾けるように脳漿をまき散らしていたに違いない。


 改めて自分の身体能力を実感させられた。


 ゴブリンに近づき足でつついてもピクリとも動かない。


 どうやらあの一撃で完全に息絶えてしまったらしい。


 意外とあっけないものだった。


 それが感想だ。


 それ以外にこれといった感慨は湧き起こらない。


 まるで作業のようだった。


 命とは儚いものなんだなあ、と年甲斐もなく思ってしまった。


 さて、また進むとしよう。


 この死体は放っておいても大丈夫だろう。


 他の動物の食料としてや森の養分として余すことなく生かされるはずだ。


 できれば役に立ってほしいものだと思いながらおれは足を進めた。






 それから数時間ほどが経っただろうか。


 存外この森は広いらしい。


 まるで終わりが見えない。


 獣道はいくらでも見つかるのだが、人が行き来するよな、しっかりと固められた道は見つからない。


 そろそろ日も傾いてきた。


 三時前後といったところだろうか。


 森に入った当初は、真上から照り付ける日差しに嫌気がさしていたが、今では木々によって日差しが遮られてできた影でだいぶ涼しくなっている。


 また、それに伴ってかはわからないが、先ほどのゴブリンのような反応が多数感じられるようになってきた。


 十中八九同じような強さのモンスターだろう。


 今のおれならば赤子の手をひねるように軽くあしらえるだろうが、今はそんなことを気にかけている場合ではない。


 反応があっても極力避けながら、そして当初向かっていた方向を外れないように注意して進んできた。


 そして、もう我慢の限界だというところで、茂みを抜けると視界がぱっと開けた。


 どういうことだとよく見ると、右から左に向かって、そして左から右に向かって一直線に道が走っている。


 舗装されたものではないが、轍が確認できることから少なくとも文明的な生命体がいることはわかった。


 不安を吐き出すようにして息をつき、右か左どちらに向かうべきかを考える。


 とはいえ判断材料など何もない。


 完全に主観で判断するしかない。


 そういうわけで、再び木の枝を垂直に立てる。


 前任者は折れてしまったが、すぐに後任のものを見つけることができた。


 こちらのほうが少し太いので、戦闘にも耐えてくれる、はずだ。


 いよいよ手を放すぞというところで、生命反応を検知する。


 今回はかなり多い。


 十、いや、二十でも足りないだろうか。


 それだけの数が、道に沿って驚くべき速さで迫ってきている。


 どうやらそれらは二つのグループに分かれているらしい。


 前のグループが、つまりこちらへと向かってきている先頭のグループの方が人数が少なく、その後ろのほうが多い。


 規模でいえば四、五倍の差があるだろう。


「また厄介ごとかよ」


 そうぼやきながら今後の対策に思考を巡らすおれであった。

お読みいただきありがとうございます。改善すべき点などがございましたらどうぞ感想にてご指摘ください。

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