えんこい2
私は、正門では無くプール横の入り口から体育館に向かう事にした。その方が体育館に近いし、プールの壁でちょっとだけだけど、日陰が出来ていたからだ。
壁沿いを歩きながら体育館を眺めたけど、緑川らしき姿は見えなかった。と言うか、暑過ぎるからか誰もいない。たった10分程度歩いただけでも汗が出る。
私はうちわで扇ぎながら緑川を探した。体育館を一周回っても見当たらなかった。
あれ?暑さにやられたかな。…夢だったとか?
電話自体が夢だったかと思いつつも、暑いから日陰でちょっと休んでから家に帰る事にした。
風が通って涼しい日陰を探したけど見付から無かった。そもそも風がね、吹いてないんだよね。体育館裏は日陰があったけど、ちょっと汚かったからやめた。悩んだ末に、体育館脇の通路の日陰にした。
この通路は、体育館シューズと上靴を履き替える為の場所があって、下駄箱が置かれていた。その下駄箱がちょっとだけ陰を作ってくれていた。
私は、ふぅ〜っと息をついて体育館の壁に持たれて座り、タオルで汗を拭いてから、うちわで扇いで風を作った。日陰はまだマシだった。
暑いな〜と思いながら目を閉じていると、蝉の声がやたら聞こえて来た。あー、夏だ…
じゃり、じゃり、と音が聞こえて、目を開けると、下駄箱の横に人が居た。逆光で良く分からないけど、多分緑川だ。
「おまえ、行き倒れみたいになってるぞ。」
第一声がそれだった。
「だって暑いんだもん。」
私はそう言いながら、ちょっとだけ姿勢を整えた。
「あはは!おまえ、変わってねーなぁ」
緑川は笑って言って、私の隣に座った。うん、なんだろう、ちょっと距離が近い気がするんだけど。私この距離、慣れてない…
「ねえ、暑いからもうちょっと離れてよ。」
私が言うと、
「えー?いーじゃん別に。照れなくていいから〜」
と、緑川は笑って言った。結局離れてくれなくて、私もどうしていいか分からず諦めることにした。
「居ないから探したんだけど。」
私がそう言うと、緑川はまた笑って、
「知ってる。見てた見てた。」
と言った。え。見てたって、何で?
「暑いから飲み物買いに行って戻って来る時見えた。」
私が不思議そうにしたのを察知したのか、緑川は説明してくれて、
「やる。」
と言って、スポーツドリンクを一本渡してくれた。
「ありがとう。」
私が言うと、
「どういたしまして。」
と、緑川は言った。
なんだろう、電話では変わってないなって思ったけど、そんな事ないのかも。ちょっとは大人になってるのかも。
緑川はもともと背が高かったし野球をやってるから身体つきも良かった。太くなくて、所謂スポーツ体型って言うやつ。帽子被ってるから分かりづらいけど、多分坊主っぽい。日焼け以外は、ちょっと夏目くんに似てる気がする。って、夏目くんの方が断然良いんだけどね!
「日焼け凄いね。」
観察した後、私が言うと、
「まぁ毎日練習してるからなー」
と、腕を見ながら緑川は言った。
「おまえはあんまり日焼けしてないね。部活してないの?」
緑川は私の腕と自分の腕を見比べながら聞いた。
「運動部じゃないもん。」
私がうちわで扇ぎながら言うと、
「あー、だから行き倒れみたいになってたのか。」
と言って、緑川は笑った。
「うちわいーな。オレにも扇いでよ。」
緑川にそう言われて、渋々扇いであげると、
「もっと気合入れて扇いでよー」
と怒られた…変わって無いよーな、変わってなく無いよーな…うーん、まぁ、人間そんなに急には変わらないよね。それに良く考えると、優しい所は昔からあった気がするし。良い意味では、変わって無いのかも知れない。




