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つれづれ野花  作者: あぐりの
ながこい
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ながこい 4

自分の好きな人の好きな人が聞けるチャンスは、ありそうでなかなか恵まれない。2年の時の私と緑川のやり取りのように、

「おまえが言ったら言う」

「そっちからどうぞ」

と言う流れになって、結局はなあなあのまま終わるのだ。

それに、いざ自分の好きな人の好きな人を知れるとなると、妙に緊張して、なんだか聞かない方がいいような気になって来てしまうから不思議だ。

今も私はそんな気分だった。


私はジュンペイとはもう2年もクラスが別だ。修学旅行も、1日目の夕方の自由行動とご飯の時間以外はほとんどクラス行動だった。それに、高学年ともなると、男女一緒に休日に遊ぶと言う事は皆無だった。

3年の時、ジュンペイと両思いだったそのちゃんは、この2年、ジュンペイと同じクラスだった。生徒会も一緒にやっているから、最低でも月に2回は役員会で一緒にいれる。そして、相変わらずクールキューティーだ。

だから、ジュンペイの好きな人がそのちゃんである確率は、多分学年1だと思う。

次に確率が高いのは、私、だと実は思っている。

これは、私の願望や自意識過剰な面を除いた、客観的に(と言っても所詮は私目線なのだが)見た結論だと思っている。

その理由は、実はいくつかある。

他の女子との対応が、私とはやっぱりちょっと、いい意味で、違う気がするのだ。


私の学校では7月に入ると体育の授業がプールに変わる。

ある日、私はプールキャップを忘れてしまったので、プール授業は見学になってしまった。プールセットをタオル1枚でも忘れてしまうと、プールには入れないルールだった。しかも、忘れ物の見学者は、ただ座って見ているのではない。先生の補助、つまりは暑い中いいように使われるのだ。まぁ、忘れ物をした自分が悪いのだけど。


その日も例外なく、ビート板片付けからなんやかんやと雑用を言い付けられたので、私は同じ忘れ物見学者のミオと、ちょこまかプールサイドを動き回っていたのだった。

プール授業の残り5分は、いつも自由時間だった。もちろん忘れ物見学者に自由など無く、遊んでいるみんなの安全を見守る監視員と言う仕事をさせられる。プール授業は学年単位で行うから、監視の目は多い方がいいのだ。そして私はこの時間に、絶対忘れ物をしないぞ〜っといつも思うのであった。


自由時間が始まって、先生に指示されたプールサイドに向かっていると、足に水がかかって、

「何忘れたの?」

と言う声が聞こえた。

ジュンペイだった。

私はドキドキしながら答えた。

「プールキャップ。」

「あー、ありがち!」

「今日暑いからホント最悪。」

「だよね、プール気持ちいいもん。ほらっ」

と言って、またジュンペイは私の足に水をかけた。

「スカート、ヤバイよ。リュウヘイ狙ってる」

と言うとすぐ、ジュンペイは水に潜って泳いで行った。私はハッとした。

今日はプールに入るつもりでいたから、着替えやすい様にワンピースで来たんだった。プール日の女子のスカート率は高いのだ。そう言えばミオもスカートだ!と思い出して、反対サイドのミオを見ると、ミオもタツヤに言われている様で、スカートを抑えながら何やら楽しそうにやっていた。

タツヤはミオが好きだと言う噂もある。確かに、タツヤはミオにはやたら絡んでくる。他の女子にもそうだが、比じゃない程だ。ミオは嫌がっているけど、嫌いではなさそうだ。今も本当に楽しそうだし。でも、タツヤじゃない人が好きだとは言っていた。誰かは知らないけど、ジュンペイでもなさそうだった。

ジュンペイのおかげで私のスカートは守られた。ジュンペイが行ってすぐ、リュウヘイが来たのだ。

「あれ?あれぇ〜⁇」

と言って、明らかに残念そうな顔していた。すると、シイが来て、

「リュウヘイ、本当にエロい!」

どうやらシイも私のスカートに気付いていて、教えに来てくれたのだった。

「さっきミオがタツヤにスカートを言われてるのを聞いて、あっ、と思って来たら、やっぱりリュウヘイがいた(笑)」

それからリュウヘイとシイの激しい水の掛け合いが始まって、自由時間は終わっていった。

ジュンペイは、ただただ気になって教えに来てくれただけなのかもしれないが、ミオも同じスカートだったのに、私の方に来てくれた。タツヤが先にミオに行ったからかもしれないけど。それでも、私は嬉しさで胸がいっぱいだった。

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