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つれづれ野花  作者: あぐりの
かたこい
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かたこい 12

12月30日。私は朝からそわそわしていた。1年前まで浪人生で今はK大生の兄は、昨日の夕方に帰って来たにも関わらず、腹も立たないほどのスピードで化学の課題を終わらせてくれた。ただ、

「全部合ってると思うけど、2問はわざと間違えてあるから。」

と言っていた。満点だと逆に怪しいでしょって、気を遣ってくれたらしいけど、休み明けのテストがあるから!正しい答えが知りたいんですけど‼︎

その兄は今日は朝からテジと遊びに出て行ってしまって、私はその場所を聞き逃してしまったので、結局どこが違うのか探すために午前は化学の教科書と格闘する羽目になってしまったのだった。まぁ、1からやる事を考えれば、すごく楽なんだけどね。


お昼を食べると、そわそわに緊張も加わって来た。親は年末の買い出しに出かけると言って、2時前に出て行った。私はますます緊張して来た。

家の電話は、この秋からやっと黒電話を卒業していた。コードレスの子機付き電話だった。だから私の部屋でも電話出来る。でも、できれば親のいない内に電話したかった。だけど、〜何時がいいんだろう⁇

私は二階の自分の部屋で悩みながら、3時過ぎにかける事に決めた。お昼を食べてちょっとまったりして、勉強し始めてちょっと眠くなるのが、3時頃。と思ったからだ。

私は電話を握り締めながら、何度も電話をかけるシュミレーションをしていた。でも緊張は高まるばかりだった。

3時になって、私は深呼吸をいっぱいしてから、夏目くんの家の番号をプッシュした。夏目くん、出てくれるかな。私の心臓はバクバクだ。


コール音が何回か聞こえてから、

「はい。」

と声が聞こえた。夏目くん…じゃない気がする…私は焦ったけど、出来るだけ丁寧にシュミレーション通りを心掛けた。

「あの、トウキくんいますか?」

ドキドキしながら言うと、電話の向こうからちょっと沈黙があって、

「あははは!ごめん、俺、俺!」

と、夏目くんの声がした。電話だからちょっと違って聞こえるけど、さっき出た声とは違って、今のは夏目くんの声だった。

「えっ?夏目くん⁇」

私が戸惑って言うと、

「そうそう、ごめん、びっくりした?」

と、電話から元気な夏目くんの声がした。

「びっくりしたー!夏目くんじゃない人が出た!と思って焦ったよー!」

私がそう言うと、夏目くんはちょっと笑ってから、

「俺じゃない人出たらなんて言うのか聞いてみたくなっちゃってー」

と言った。

「えー?どう言う事?」

私は意味が分からなかった。

「だっていつも、夏目くんって言うじゃん。名前知ってんのかなって思って。」

いやいや、好きな人の名前ですから、知ってるに決まってるじゃん‼︎いつか名前で呼びたいって思ってますから!

「夏目くんこそ、私の名前知ってる?」

私は夏目くんに聞いてみた。そう言えば普段呼ばれた記憶がない。ねぇ、とか、そっち、とかしか呼ばれてないかも。うわー、なんか悲しくなって来た…

ちょっと落ち込んでると、

「知ってるよ、さわでしょ?」

意外にも、夏目くんにサラッと言われて、悲しかった気持ちが一気にドキドキに変わった。夏目くんに呼び捨てされたー‼︎

私が興奮を抑えようとしてると、

「あれ?違った?さわだよね?」

と、ちょっと焦った夏目くんの声が聞こえた。

「合ってる。」

私は興奮を気付かれないように抑えるのに必死だった。2回も言ってくれた。

「なんだー!無言になるから違ったのかと思って焦った〜」

私は、ごめんね、と謝りつつも、

「でも最初にいじめてきたのは夏目くんの方だから。」

と苦情を入れると、

「あははは!ごめんごめん。」

夏目くんは軽く謝って、

「だって名前言って欲しかったんだもん。」

と無邪気に言った。





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