かたこい 11
終業式の朝は、いつもに増して人が居なくて、電車も座れる場所がちょこちょこあった。座る程の距離でも無かったので、私はいつも通り入り口付近の手すりに持たれて窓から景色を見ていた。
夏目くん、いるかなぁ⁇昨日、わざわざ聞いてきたってことは、いるよね?と思いながらもキョロキョロ探せるハートの持ち主ではないので、駅までモヤモヤする羽目になった。本当に私ってダメだわ。
もっと私がハートの強い人間だったら、ジュンペイとももっと続いていたのかも知れない。中2で同じクラスになったタツヤに言われたのを思い出した。
中学生になってすぐくらい、ジュンペイは私と話すキッカケを作ろうとしてくれていたらしかった。
でも私が全然気付かないので、もう冷めて行ったんだ。と言っていた。
本当は私も気付いていた。でも、声をかける勇気もみんないる中で2人で話す勇気も、私には無かった。
私は相変わらずだ。今だってそう。周りの目を意識し過ぎる自意識過剰なんだ。だれも気にしないのに、分かってるけど、夏目くんと同じ車両に乗れない。乗れたらもっと楽しいのも分かってるのに。意識し過ぎて無理…
駅に着いて階段を登り終わる頃、
「おはよ!」
と言われた。びっくりして見上げると、夏目くんがいた。
「あははは!びっくりし過ぎ!」
いや、だって、そりゃそうですよ。
「だっていると思わなかったから。」
私は階段を登りながら言った。
「あれ?昨日聞いたじゃん、今日来る?って!」
「え、そーじゃなくて…」
「ん?」
「ほら、いつもはあっちの階段降りてからじゃん。」
私が言うと夏目くんは、
「今日はほら、人が居ないから。ここで待ってても邪魔にならないじゃん?」
と言って、改札に向かった。私は一気にドキドキが増した。
もしかして、いつも何となく待ってくれてたのかな?これ、思い違いしてない?ヤバイ。勘違い女になっちゃう。
夏目くんに限ってそんな事は無い。他意はない。喜ぶと悲しくなるからダメだ。友達として見てくれてるだけだ!意識し過ぎちゃダメだ。私は自分に言い聞かせた。
私は遅刻ギリギリで来たカノを待てずに、ハナエちゃんに話を聞いてもらった。
「どうなの?これ!私勘違い女?」
私が聞くと、
「うーん、ナチュラルに言いそうな感じプンプンだから分からないね!でも、8割の女子は勘違いすると思うわ〜」
ハナエちゃんは分かる分かる、と言ってから、
「でもさ、その後の会話考えると、良く取り過ぎるのは危険な感じもするね。」
と言った。
そうなのだ。その後はいたって普通だった。私がしたかった化学の課題の話になったから良かったんだけど。
「昨日話しても良かったんだけど、答え写させてとか、周りに聞かれたらヤバイじゃん?」
「あれ?写すの?」
「え⁈あ、違う違う!答え合わせ!間違えた!」
夏目くんは慌てて訂正して笑った。
「あー、まぁそれでね、29日まで部活があるから、30日の午後とか、電話くれない⁇」
「電話?」
私は意外なワードにちょっとショックだった。どっかで会って、答え合わせするのを夢見ていたからだ。
「そう。それまでになんとか頑張ってやるからさ。」
「いいけど…部活ある日に届けようか?」
私は休み中に会いたい欲で、頑張って言ってみた。
「でもそれじゃ悪いし、バレてもヤバイし。俺も学習室とか考えたけど、開放日29日までなんだよね。それまでに終われる自信無いからさー」
夏目くんはいろいろ考えてくれていたみたいだった。それは嬉しかった。
「どっかの図書館とかファストフード店とかも思ったけど、わざわざ出て来てもらうのもなーとか」
全然苦じゃありません。何て言えないけど。
「部屋の片づけもしろって言われてるし。あーもう、部活だけして生きて行きたい。」
私は思わず吹き出してしまった。
「夏目くんぽい。」
私がそう言うと、夏目くんもちょっと笑って、
「まぁ、そんな訳で、30日の都合いい時に電話貰うのが1番かなって。お願いします。」
夏目くんはお辞儀をして笑った。私はその笑った顔にやられてしまった。会えないけど、まぁいっか。
「電話、絶対出てね。恥ずかしいから。」
私がお願いすると、
「了解!」
夏目くんは指で丸を作って言った。そして、
「じゃあ、俺、自主トレしてくるわ。」
「頑張ってね。」
「ありがと!またね。」
と言って別れたのだった。
帰り道、カノにも話すと、
「うーん、微妙‼︎」
と言われてしまった。とりあえず、30日。頑張ろう。




