かたこい 7
私が勝手に盛り上がって盛り下がってしてる間に、化学のテストが返ってきた。平均点が50点を下回る難しいテストで、全く勉強しなかった私の点数は、なんと10点だった。赤点が23点くらいだから、その半分もない…ヤバ。夏目くんは返ってきたかな。どうだったかなぁ。
「えっ‼︎10点⁈マジで⁇」
返って来た次の日の朝、夏目くんに報告したら、この反応だった。
「ヤバくない?てゆーか、平均50下回るって、問題すらヤバイよね。」
「だよねー」
「俺今日返って来るけど、ヤバイなー!」
「今日なんだねー楽しみだね。」
私がちょっと意地悪く言うと、
「楽しみじゃないし!」
と、夏目くんは言って、
「でもある意味楽しみかも。」
と言って笑った。
その日のお昼休み、私が友達のハナエちゃんと教室で話していると、
「あれ?夏目くんじゃん。さわ、夏目くんいるよ!」
と、コソっと教えてくれた。ハナエちゃんは私が夏目くんを好きなのも、朝一緒に歩いているのも知ってる、2年からの友達だった。
「えっ!あ、本当だ!」
私は入り口のドアの所で、クラスの男子と話してる夏目くんを発見した。
「さわも話に行けばいいじゃん。」
ハナエちゃんは私にそう言った。
「えー、無理。何話したらいいか分かんないもん。」
私がそう言うと、
「え?毎朝話してるんでしょ?」
ハナエちゃんは呆れ顔で言った。
そうなんだけど、毎朝話してるんだけど、私達の会話、実は間が多いんです。内容も、昨日あった事とか今日の事とか、電車の中で考えたテーマを話してるから、急な会話は無理なんです。それに、朝は周りに人が少なくて2人だから話せるっていうのも、大きな要因だった。とは言え、廊下で会った時には、
「あ。」
「おう。」
っていうやり取りくらいは普通にできる。だけど、会話ってなると、意識し過ぎて難しい。
「まぁ、分からなくも無いけどねー」
ハナエちゃんは納得しつつも、納得してない感じで言った。ハナエちゃんは誰とでも話せるから羨ましいです。本当に。
そんな話をハナエちゃんとしていると、夏目くんと話していた男子が、
「夏目が呼んでるよ。」
と私に言ってきた。私はびっくりした。けど嬉しかった。けど恥ずかしかった。ちょっと顔が熱くなった。ハナエちゃんが、
「さわ、緊張し過ぎだから。」
と笑った。いやいや、するでしょ!チラッと見ると、夏目くんがドア越しに見えて、コイコイと、手招きした。何これ、嬉しすぎるんだけど‼︎
私がドキドキしながら行くと、
「化学、返って来た。」
と夏目くんは言って、
「ヤバイ。10点って言ってたよね⁇」
と私に聞いた。
「うん。夏目くんは?」
私が聞くと、しばらくの沈黙の後、
「…8点。」
と、夏目くんは答えた。
「えっ⁈本当に?私より悪いじゃん〜」
と私が笑って言うと、
「まさか負けるとは思わなかったー!」
と夏目くんも笑って言った。
「びっくりしたから、早く教えようと思って。」
夏目くんは笑顔でそう言って、
「じゃーね!」
と、教室に戻って行った。ちょっとの時間だったけど、幸せ過ぎた。明日朝会った時に話してくれるものだと思ってたのに、わざわざ呼び出してまで教えてくれに来てくれるなんて!今日の恋愛運はかなりいいに違いない‼︎
放課後、教室でカノとハナエちゃんと、この話で盛り上がった。カノとハナエちゃんは同じ料理部で、私と同じで金曜日だけ部活のある、いわゆる帰宅部だった。私がハナエちゃんと仲良くなれたきっかけになったのが、カノだった。カノもハナエちゃんも、誰とでも話せるから羨ましい。
「客観的に見てたら、いい感じに見えたよー」
と、ハナエちゃんが言ってくれた。カノも、
「聞いてる感じだと、そうだよね。そりゃ欲も出るわ。」
と言ってくれた。
「でも夏目くんの、部活命はブレないもんねー」
「坊主の間は無理そうだね。」
「だよね…だってもう12月なのに、また刈ったって言ってたもん。」
そうなのだ。テスト後の朝、
「寒くて気合い入った!」
と夏目くんが髪を刈った事を教えてくれて、
「ニット帽が温かそうだねー」
と私が言うと、
「中は寒そうだけどね。」
と、夏目くんはニット帽を脱いで見せてくれた。
「わー!また短くなったね!」
「長さは変わって無いけど、触る?」
夏目くんはそう言って、頭を私の方に傾けてくれた。私はドキドキしながら、撫で撫でさせてもらった。
「うわーツンツン。すごいねぇ5ミリ?」
「そう。切り立てだから綺麗でしょ!」
夏目くんはまたニット帽を被って、
「あーあったかい〜」
と幸せそうに言った。
「何それ!普段の2人と全然違うじゃん‼︎」
「だよね⁈私、めっちゃ幸せだったんだけど‼︎」
「さわちゃん、夏目くんじゃなきゃ付き合えたかもね〜」
「そっかー…坊主は部活命の証みたいなもんだもんね。決意表明されてるのに、嬉しくなってたらダメだよねー」
「まぁいいじゃん!」
「朝見に行っちゃおうかな〜時間合わせて。」
「えー‼︎絶対来ないで!」
「あははは!私まだ寝てるし、その時間。」
「えっ!カノそれはヤバく無い?」
「カノはいつもギリギリだもんねー」
「うん、限界に挑戦してるの。」
夏目くんとの朝も楽しいけど、友達との放課後トークも、違うところですごく楽しい。
中学は部活ばかりで、放課後ガールズトークをするってあまり無かった。だからこうやってオヤツを食べながら、まったり恋愛トークや課題をやったりするのに、憧れていた。
カノとハナエちゃんは、本当に居心地良くて楽で、一緒にいて楽しかった。




