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つれづれ野花  作者: あぐりの
かたこい
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かたこい 3

私の学校では、陸上競技大会というイベントが1学期の終わりにあった。私のクラスは学年で2位になり、みんなで打ち上げにカラオケに行く事になった。駅前にあるカラオケ店は、H高生御用達だった。

私は、カノやクラスの子達と一緒にカラオケに向かっていたのだが、途中で体育着を忘れたのに気付いて、1人取りに戻った。汗臭い体育着を放置は出来なかった。

学校にはちょこちょこ人はいたが、校舎に入ってみると、シーンとしていて、ちょっと薄暗かった。私は急いで三階の一番奥のクラスに向かった。

7月の6時近くとは言え、夕陽の差し込む廊下は大丈夫だったけど、教室はちょっと薄暗かった。私は、体育着の入ったバックを持って教室を出ようとした。

ドンっ‼︎

何かにぶつかって、私は尻餅をついた。お尻とおでこが痛い。

「ご、ごめん‼︎大丈夫⁈」

私は声の主がすぐに誰か分かった。夏目くんだ。逆光でシルエットだけど、坊主頭だし、間違いなく夏目くん。私はいろんな意味でびっくりしていた。

「だ、大丈夫…」

私はそう言って、バックから出た体育着を入れた。夏目くんはしゃがんで手を出して、

「びっくりさせてごめんね。人がいると思わなくてさー」

と言った。私は出された手を掴んで良いものか悩みつつも、ドキドキしながら手を出すと、夏目くんはギュッと掴んで立たせてくれた。夏目くんには特別なことではないと分かってるけど、私は嬉しかった。

「体育着忘れたの?俺弁当箱〜」

と言って、夏目くんは自分の机に取りに向かった。

「お弁当箱も怒られちゃうね。」

私がそう言うと、

「だよね!前にねーちゃんが忘れた時、親がめっちゃ怒ってたもん。危なかったわー」

夏目くんは笑って言った。夏目くん、おねーちゃん居たんだ。言われてみると、弟っぽいかも。

「打ち上げ、行くよね?行こっか!」

夏目くんはカバンにお弁当箱をしまって、駅の方を指した。一緒に行っていいのかな、と思うと顔が緩んできた。


とは言え、私はドキドキし過ぎて何話していいか分からない…何か、何か話さなくちゃ、せっかくのチャンス。と思っているけど、頭回らない…

夏目くんをチラッと見ると、普通だった。そうだよね、そりゃそうですよね。分かってます。けど、こうやって男子と隣で歩くの、久しぶり過ぎて、どうしていいか分からない。学校から駅までの道、思い出してどうするんだって思い出を思い出してしまった。うわー…懐かしいで留めなくちゃ。

「わあ‼︎」

夏目くんの声と共に、突然、腕を引っ張られた。

「信号‼︎赤!」

びっくりしている私に、夏目くんの大きな声が響いた。…ぼーっとしてた。思いっきり思い出に浸ってた。

「ご、ごめんなさい…ぼーっとしてた。」

「大丈夫?疲れてるなら帰った方がいいよ?」

夏目くんは優しい。私にだけじゃないのが悲しいけど、今は素直に嬉しい。

「大丈夫。疲れてるけど疲れてない。」

「あはは!それ分かる!打ち上げとか、楽しいよねー」

「夏目くん、好きそうだねー歌う人?」

「俺は、雰囲気楽しむ人。」

「私もー。一緒だね〜」

あ、普通に会話が成り立ってる。嬉しい。過去の思い出じゃなくて、今のこの時間を大切にしたい。そう思った。


でも、学校から10分くらいのお店なので、もう着いてしまった。夏目くんが受付で部屋を確認しに行ってくれた。私は受付の横で、もっと2人でいたかったなーと思っていると、後ろから、

「あ、さわちゃん!お帰り!」

と、カノが声をかけてくれた。

「さわちゃん、夏目くん居ないよー!残念だねー好きな人居ないとテンション下がるよね〜」

カノ…私の表情から、カノは横をフッと見て、

「あれ?…あ、な、夏目くんじゃん。あはは〜いたー…」

気まずい空気の中、カノは、

「えーと、部屋は301だから〜」

と言って、ごめん!頑張れ!と私に言って、階段をダッシュで登って行った。


残された私達は、受付のお兄さんの好奇な視線に耐え切れず、とりあえず部屋への階段へ向かった。何も言わない夏目くんに、もしかしたら聞こえてなかったかも?なんて甘い思惑を抱いてみた。でも、あの受付のお兄さんの好奇な目…夏目くんに聞こえてないわけ無い。

二階の踊り場に辿り着いた時、私は覚悟を決めて、

「な、夏目くん!」

と、声を掛けた。夏目くんは階段を登るのをやめて、止まってくれた。

「あ、あの、さっきの、聞こえてないって事は、なかったり、あったり…しないでしょうか…」

わー私は何を言い出してるんだろう…夏目くんも、えーと?って顔だった。

「聞こえてなかったら、それはそれで良くて、聞こえてたら、えーと、…」

どうしたらいいのか。ちゃんと私が言った方がいいのかな。いや、でももう伝わってるし。

「…あははは!」

夏目くんが笑い出した。私はびっくりして、

「えっ?ど、どうしたの⁇」

と聞くと、夏目くんは笑いながら、

「いや、ごめんっ!何言うのかと思ったら、予想外の内容でっ…あー、ごめん。」

と言って、ちょっと落ち着いてから、

「俺ね、部活終わるまで付き合わないって決めてるんだ。…だから、ごめん。」

と言った。私は何となくそう思っていたから、そんなにショックではなかった。それに、夏目くんがものすごく笑って場を和ませてくれたので、助かった。

「あー、笑っちゃったーいや、本当に面白い人だよね!」

私の告白は、夏目くんの中で面白い思い出となったみたいだった。その後も、夏目くんが態度は変わらずいてくれたから、予定外の告白になったけど、知ってもらえたって事は良かった気がした。でも、カノには一応、怒っといた。

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