うえこい 33
春休みが終わって、クラス替えがあった。嬉しい事に、シイと同じクラスになった。あと、緑川も一緒だった。それと、ジュンペイも。
ちょっとドキッとしたけど、お互いもう小学校の頃の感情は無くて、普通だった。シイと緑川も同じだった。あの頃はあの頃。今は今だ。
シイと私も、クラスで一番仲の良い友達は別だった。仲が悪い訳ではないけど、2年間過ごして来た場所の違いなだけで、普通に楽しい間柄だ。
正直一番気まずいのは緑川だった。春休み中に会ったからだ。学校で見せない姿を見られるのは、やっぱり恥ずかしい。でも、あの時ダイキの言う様に、私に付き合ってくれたんだとしたら、やっぱりお礼は言いたかった。
でも、なかなかいいチャンスが無くて、まぁいっか。と私が思い始めた頃、チャンスがあった。私が部活の休憩で手洗い場に居た時、緑川も来た。
「よーう。」
と緑川は言って、顔を水で洗ってからタオルで拭きながら、
「彼氏とは仲良しな訳?」
と聞いて来た。おじさんみたいな言い方に思わず笑ってしまった。
「あの時は、付き合ってくれてありがとう。」
私が言うと、緑川はちょっと照れて、
「別に。暇だったし。」
と言った。私は、本当に付き合ってくれてたんだ。と思って、いい奴だなーと思った。
「おまえ、いつも彼氏といる時、あーなの?」
拭いてたタオルを首に巻きながら、緑川が聞いて来た。
「あーって?」
私は意味が分からず聞き返した。緑川は私を見て、
「いーや、なんでもねー」
と言って、じゃあな。と言ってグランドに走って行った。私はますます意味が分からず、変なやつ。と思った。でも、とりあえずお礼が言えたから良かった。
ダイキとの約束の日、私は遊歩道のベンチに座って、駅から来る人達を見て待っていた。この駅は路線の変わり目の駅なので利用者が多かった。電車もたくさん来る。でも、ダイキはなかなか来なかった。
私は駅を見るのに疲れて、街路樹の新緑を眺めていた。こうやって待つのは嫌いじゃないけど、不安にならないかって言われたら、もちろん不安になる。前だって、緑川がいてくれたから大丈夫だったのかもしれない。話し相手がいるだけで、不安を忘れる事が出来るのだ。もしかしたら今日は来れないかもしれない。でも、今日の次の約束はしてない。私達の関係は、直ぐに途切れてしまう…
私はそんな不安を飲み込む様に、ペットボトルの水を飲んだ。ダイキと会う時、悲しい顔で会いたくない。私は遊歩道に整備されている花を見て癒される事にした。ツツジが満開で綺麗だった。蜂も蝶も蟻も、忙しそうだ。見てるとちょっと不安を忘れれた。
「さわ。」
私は、ハッとして、声の方を見た。ダイキだった。来てくれた。良かった。私はダイキに小走りで近寄って、
「ダイキ。お疲れ〜」
と言った。私は嬉しかった。
ダイキはちょっとお疲れな雰囲気だったけど、近寄った私の頭をなでなでしながら、
「犬みたい。」
と言って笑った。そして、手を繋いでくれた。
私には、気づけなかった。だってあまりにも幸せな、いつものダイキとの時間だったから。ちょっと真面目な話しも、私をからかったりして、可愛い。って言ってくれるのも、人目を盗んでするトロけるキスも。いつもと同じ、幸せな時間だった。




