うえこい 31
時計を見ると、ダイキとの約束の3時まで10分くらいになっていた。ちょっとドキドキしてきた。早く会いたい。でも、もしかしたら勉強が捗って来れないかも。その可能性も考えておかないと、実際そうなった時悲し過ぎて大変だと思った。寂しいけど仕方ない。分かってるけど、やっぱり会いたい。どうしよう、ダイキが好き過ぎる…
「何にやけてんの?」
急に声を掛けられてびっくりした。緑川が自転車に乗って現れた。
「俺のカッコいい姿に惚れた⁇」
緑川はニヤっと笑って言った。相変わらずの緑川だ。
「違うから。…てゆーか、自転車で来たの?」
私は呆れながら聞いた。
「そう。体力作りも兼ねて。」
緑川は自転車を止めて、私の隣にどかっと座った。野球に関しては努力家なんだなとちょっと尊敬した。
「で?おまえは何してんの?」
緑川は一度気になった事は結構しつこく聞いてくる。私は誤魔化すのは辞めた。
「ん〜、人待ってる。」
「人って…まさか彼氏とか⁈」
「まさかって何?失礼だから。」
「えー!マジで?違う学校なの?」
「そう。違う学校。お願いだから早く帰って下さい。」
「いーじゃん、会わせてよ。」
私は、やだ。と言って拒否したけど、多分無理だろうな。
「約束何時なの?」
緑川は時計を見ながら言った。
「3時。」
「えっ⁈3時?おまえ、結構前から居なかった⁇」
あ、やっぱりそこ突っ込んで来るんだ。
「うーん、私は暇だから。」
「暇って…えー?ないわ〜」
でしょうねーと私は思って、ふふん。と笑った。それを見た緑川は、
「おまえ、本当に謎〜」
と言って笑った。
時計は3時を回っていた。でも私は気にしてなかった。私が気にしないから、緑川も何も言わずにいてくれたみたいだった。
「おまえ、喋らなきゃ普通にいいのに。」
緑川が言い出した。私は気遣ってくれてるのかな、と思った。
「何それ。喜んでいいのか、ダメ出しなのか、どっち?」
私はちょっと笑って言った。
「どっちかって言うと、ダメ出し。」
緑川も笑って言った。私は、ひどっ!と言って笑った。
その時、ちょっと強目の風が吹いて花びらが舞った。私の好きな景色だった。ダイキと見たかったなーと思った。あ、ヤバイ。悲しくなってきた。私は立ち上がって、桜の木の下で桜を見上げて、
「緑川も彼女と見れたら良かったね。」
と言った。緑川には同級生の彼女がいた。いつから付き合ってるかは知らないけど。緑川も私の方に来て、
「彼女とだったらキスしたくなるなー」
と笑って言った。 ダイキとキスしたいなーと思っていたら、顔が熱くなってきた。ヤバイヤバイ。ちょうどまた風が吹いて、熱くなった顔を冷やしてくれた。
「あ、花びら髪についてるよ。」
緑川が教えてくれた。今の風で舞ったのが付いたようだ。私が払っていると緑川が、
「違う違う、そこじゃなくて…」
と言って近付いて来た、その時だった。私の体はお腹の辺りから後ろに引き寄せられて、緑川の伸ばした手は掴まれていた。
「触らないで。悪いけど。」
私の頭の上から声がした。私と緑川はびっくりした。
「だ、ダイキ⁈」
ダイキは、緑川の手を離すと、
「あー疲れたー‼︎坂キツーっ!」
と言ってから、
「さわ、誰?この、野球、少年。」
と息切れしながら言って、はぁーっと深呼吸して息を整えた。私が、同級生。と答えると、びっくりしていた緑川が、
「彼氏⁇年上なの⁇」
と言った。
「そう。だから、ごめんね。」
ダイキは頭を私の肩に乗せて、息を整え続けた。
「いや、俺、彼女いるし…」
と、緑川が言うと、
「あー、そう。じゃあ、」
とダイキは言うと、また深呼吸して、
「さわに付き合ってくれてたの?ありがとう。」
と言った。私は、
「えっ、そうだったの?」
と緑川に聞いた。緑川は、いや、別に…と言ってから、
「まぁ、彼氏、来て良かったな!じゃあな!」
と言って、自転車に乗って帰って行った。私は、緑川の意外な優しさを知って、変わって無いようで変わってたんだなぁと思った。




