表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つれづれ野花  作者: あぐりの
うえこい
35/190

うえこい 2

兄は、中学時代の友達のテジと小山さんの2人と、高校から部活が一緒の畑中さん、クラスが一緒の羽鳥さんと岩井さんの6人組だった。

兄の通う高校は、この地域では一番の進学校で、穏やかなのんびりした人が多い印象がある。実際みんなそんな雰囲気の人達で、私達+父と言うコブ付きでも全く気にしてないようだった。

父も父で、良くも悪くもマイペースな人なので、付き添いのはずなのに自由に過ごしていた。スキー場でも、お昼の待ち合わせと旅館に戻る時間だけ決めて、勝手に上級コースとかに行って、満喫していたようだった。だから私達は私達で、3人で自由に楽しんでいた。


このスキー旅行は深夜バスを使っているので、最終日でも夕方まで目一杯スキーを楽しむ事が出来た。

私達3人は、明日はちょっと違うコースも行ってみようか、と夕食後に相談していた。3人とも、だいぶ滑れるようになって来たからだ。父に一応伝えると、お腹いっぱいで、まだ8時前なのに寝ようとしていた。私達はまだまだ寝る気ないのに。

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。私が気付いて出ると、外に小山さんがいた。びっくりした。

「今から近くのカラオケに行くんだけど、一緒に行かない?」

と誘ってくれた。私は、チエちゃんとかなちゃんに賛同を得てから父に相談すると、

「10時までね。寝てると思うから鍵持って行って。」

と、眠そうに許可してくれた。私達は、はーい。と言って、カラオケに行く事にした。


私達と兄達は、予約時期が違ったのもあったからか、部屋のフロアが違った。食事の時に見かける事はあったけど、特に交流する事なく過ごしていた。兄との会話でさえ、した記憶が無いくらいだった。だから、カラオケに誘われたのにはびっくりした。

兄とテジは眠いからと言って、カラオケには来なかった。父といい兄といい、過保護気味な母が知ったら、監督責任問題を問いそうだな、と思った。母が付き添いじゃなくて良かった。夜にカラオケなんて初めてだったから、ワクワクが止まらなかった。


カラオケは旅館から数分の場所で、スキー客をターゲットにしているようで、意外と新しい雰囲気で綺麗だった。当時はカラオケが流行り出した時で、学校のイベントの打ち上げは、だいたいカラオケだった。私も数回は行ったことがあったけど、個室は初めてで、意外と狭いんだなと思った。いつもは1クラス分の人数が入る、イベントルームだったから、広かったのだ。

部屋には、5人は座れるL字の長椅子と、個イスが3つ整頓して置かれていた。7人で入ると、窮屈ではないけど、隣との距離が結構近くて緊張してしまう感じだった。私達がどう座ろうか戸惑っていると、長椅子にどうぞ。と言われた。私はチエちゃんに押されて奥へ詰めて座った。

席は、L字の長椅子に奥から羽鳥さん、私、チエちゃん、かなちゃん、テーブルを挟んで個イスに小山さん、畑中さん、岩井さんが座った。

私は初めは緊張していたけど、みんな楽しい人達だったので直ぐに打ち解けていった。チエちゃんとかなちゃんも、楽しそうにしていた。


私がトイレに行って、部屋に戻る時、たばこの自販機の前で小銭をばら撒いてしまった人がいた。私の方にも転がって来たので、拾って渡してあげた。大学生っぽいおにーさんだった。酔ってるみたいで、上手くコインを入れれないようだったので、私は見かねて入れてあげた。すると、

「ありがとう〜一杯ご馳走するよ〜」

と言って絡まれてしまった。私は、大丈夫です。と言って逃げようとすると、手を掴まれてしまった。

「中学生?可愛いね〜」

と、お酒の匂いがプンプンしていて私は怖くなった。

「放して下さいっ!」

と、掴まれた手を振り払おうとした。でも私の力では敵わなかった。その時、

「おにーさん、この子俺のツレだから‼︎」

と、私の手を掴んでいた手を、振り払ってくれた人がいた。びっくりして見ると、岩井さんだった。岩井さんは泣きそうな私を自分の後ろに隠してくれた。

ちょうどその時、おにーさんの友達らしき人が来て、

「コイツ絡んでた?ごめんね‼︎」

と言って謝ってくれて、酒癖本当に悪りぃなー!と言いながら、部屋まで連れ帰ってくれた。

それを見届けてから岩井さんは、

「はぁーっ!びっくりした‼︎もう大丈夫!」

と言って私の頭をなでなでしてくれた。私は、

「ありがとうございました。」

と言って、泣きそうだった顔をペチペチ叩いた。そんな私を見て、

「無理しなくていいよ?怖かったよね。」

と、優しく言ってくれた。

「俺、ハンドボールやってるから、握力あるんだよね。手、貸して。」

と言って私の手を握って力を入れた。私は、

「痛い痛いっ‼︎」

と言って手を離すと、岩井さんは笑って、全然力入れてないのにーと言って、

「さっきのおにーさんには全力だったけどね。」

と言って笑った。私は、おにーさんがちょっと心配になったが、釣られて笑ってしまった。

「よしよし、じゃあ部屋に戻ろうか!」

と言って、私の頭をポンポンした。私の怖かった思いは、岩井さんのお陰で、急速に溶けていった。


部屋に戻ると、座る場所が変わっていた。L字の長椅子に、入り口側からチエちゃん、畑中さん、かなちゃん、小山さん、奥の個イスに羽鳥さんが座っていて、その隣に私、岩井さんと座った。羽鳥さんが岩井さんに、

「トイレ、遠いの?」

と聞いてきて、いや、近いよ。と岩井さんが答えると、

「遅くなかった?う●こ⁇」

と言った。私は思わず吹き出した。

「はぁ?ん〜あぁ、スッキリ」

と岩井さんは本当の事を言わなかった。私に気を遣ってくれたようだった。羽鳥さんは笑って、また歌い出した。

チエちゃんと畑中さんは仲良くなったようで、2人で良く話していたようだった。かなちゃんは、いろんな人と話せるようになっていて、小山さんと羽鳥さんと冗談を言っていた。私は岩井さんとその話を聞いて、笑って過ごしていた。トラブルもあったけど、私達のカラオケは、こうして幕を下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ