ながこい 28
次の日、レンは普通だった。普通過ぎるので、私は、あれ?夢だったかな、と思うほどだった。でも、ちゃんと帰れた?と聞かれたので、夢ではなかった。
月曜日は移動教室が少ないから、他のクラスの人と会う機会はあまり無かった。タツヤに、ジュンペイに伝えてくれたのかどうかだけは確認したかったけど、伝わっていた時のショックを思うと、勇気が出なかった。
私がそんな感じでいると、シイが心配してくれた。帰りに話す約束をすると、
「あ、でもクラス委員の集まりがあるんだった!」
とシイが言った。シイは後期のクラス委員をしていた。教室を使うと言っていたので、生徒会室で待ってるよ、と私は言った。
生徒会室でカバンを机に置いて、ふと窓から外を見ると、タツヤがちょうど帰るのが見えた。私は勇気を出して、聞こうと思った。窓を開けて、タツヤー!と呼ぶと、タツヤはキョロキョロして、2階の私に気が付いて、
「あ?あっ‼︎‼︎」
と言って、慌てて下駄箱の方に戻って行った。私はタツヤが来てくれるのかな、と思って、窓を閉めて適当な椅子に座って待つ事にした。すると、走って来る音がして、ガラガラっと激しくドアが開いた。見ると、タツヤじゃなかった。
「えっ⁈じゅ、ジュンペイ⁈」
私はびっくりした。
走って来たジュンペイは、息を整えながら、私の方へ来て、
「タツヤが、伝え、忘れてたって、今。」
と言って、はぁーっと息を吐いて、私の隣にガタンっと座った。
「だ、大丈夫?」
と私が聞くと、うん大丈夫。とジュンペイは言った。いや、まだ辛そうですけど。
「タツヤに蹴り入れて、下駄箱からダッシュしてきた。」
ジュンペイは笑って言った後、
「ごめん、オレ、今聞いて。昨日、待ってたよな?」
「え、あ、うん、待ったけど…」
と、私は言うと、タツヤが伝え忘れてただけだって知った安心と、ジュンペイが来てびっくりしたのとで、涙が出て来た。私は、ごめん…と言って止めようと頑張ったけど、なかなか止まらなかった。ジュンペイは焦って、
「本当に、ごめん。」
と謝って、私をギュッとしてくれた。
ジュンペイは私が落ち着くまで待ってから、
「もしかして、昨日も…泣いてた?」
と聞いて来た。私は、えっ?と言うと、
「実は、今日のお昼にレンとすれ違った時に、オレは泣かさねーからって言われたんだよ。オレ意味分かんなくて、オレも泣かさねーし、って思ったんだけど、泣かせてたんだな。本当にごめん。」
と、ジュンペイはまた謝った。それから、
「…レンに、話したの?」
と聞いた。
「昨日、レンが来た。」
私は正直にジュンペイに話した。ギュッとされたのは流石に秘密だけど、ちゃんと断った事を伝えた。ジュンペイは、
「そっか。」
と言って、ちょっと嬉しそうに笑った。
「本当はさ、運動会の休み明けに話したかったんだけど、おまえ休んでたじゃん。」
ジュンペイはそう言って、もう元気なんだよね?と聞いた。私は、
「本当は木曜には元気だったけど、金曜だけだし休んじゃえって。」
と言って笑った。ジュンペイは、
「なんだよーあんまり長く休むから心配だったのに。」
と言ってむくれた。私は心配してくれてた嬉しさと、むくれたジュンペイが可愛くてにやけてしまった。
「それに、早くおまえの気持ち聞いて安心したかったんだけど。」
ジュンペイは私を恨めしそうに見て言った。
「あんなレン見たことないから、本当にヤバいと思った。」
確かに全然違った。いつも穏やかなレンが、あんなに攻撃的な感じになるなんて初めて見た。でも、
「ジュンペイだって全然違ったよ?」
と私は思っていた。ジュンペイだって、いつもはもっと余裕がある感じだ。
ジュンペイは恥ずかしかったのか、机にぐで〜んとなって、
「ねぇ、おまえはいつからオレを好きになってくれたの?」
と、突然聞いて来た。
「な、何?急に…」
私が焦っていると、ジュンペイは姿勢を戻して椅子にもたれて、
「だってさー、レンに言われたくらいで動揺してる様じゃやっぱりダメなのかなって。だから、オレだって理由知ってたら自信になるかなーって思って。」
と私を見て言った。私は、前にジュンペイがレンに勝てる所が無いって言っていたのを思い出した。私は仕方なく、
「私は3年の時もだけど、4年のドッチボール大会の時から…ずっと、です。」
と正直に言った。恥ずかしいっ!
「ずっと?何?」
ジュンペイは意地悪そうに私の顔を覗き込んで言った。
私は恥ずかしさに耐えれなくなって、
「もー!いーじゃん!おしまい!」
と言って、机に伏せた。
ジュンペイはそんな私の横で楽しそうに笑いながら、私の頭をなでなでしていた。
しばらくして、
「ところで、何でここにいたの?」
と、ジュンペイに聞かれた。
「シイを待ってた。クラス委員の集まりあるから。」
「そっか、じゃあそろそろ行かないとかー」
「うん、もう終わるかな?」
時間はもう4時を回ってた。今は4時半下校だ。私は様子を見ようと席を立つと、ジュンペイが私の手を掴んで引っ張って、ギュッとした。そして、
「もう絶対、泣かさない。」
と言って、キスをした。




