ながこい 26
日曜1時。タツヤにお願いしたけど、すごくドキドキしてきた。良く考えたら、私から呼び出すのは初めてだし、そもそもまだ2回しか、ジュンペイと2人きりで話す機会がなかった。2回とも、私には濃厚な時間で、2回目なんて、思い出すのも恥ずかしいんだけど!
でも、私は不安だった。運動会から2週間くらい経つのに、ジュンペイと話す機会が無かった。まぁ、私が1週間休んだのもあるけど。廊下で会ってもリュウヘイとかいるから、そんな話は出来ないし。と言うか、廊下で会う時って、だいたいリュウヘイが絡んで来るパターンで、ジュンペイは隣で呆れてるって感じだった。こう言う時、クラスが違うって本当に辛い。
もしかしたら、もう、私の事はどうでも良くなったのかもしれない。
とにかく、私はレンに伝える前に、ちゃんとジュンペイと話しておきたかった。ジュンペイの気持ちも気になるけど、私の気持ちをちゃんと伝えようと思っていた。
ただ、来てくれるのか不安だった。1番の不安の素は、タツヤがジュンペイに伝え忘れてないかだ。すごく、不安…
不安を胸に、私は1時前には神社に着いた。時計が無いから多分だけど。
キョロキョロ辺りを見回したけど、ジュンペイらしき姿、というか、人が居なかった。今なら危険レベルな雰囲気だが、当時はそんな事全然考えてなかった。平和な時代だ。
この神社は春にお祭りが行われていた。子供達が神輿を担いだり、厄年の大人達が餅投げをする。この辺ではちょっと大き目な神社だった。山を削って造られているので、樹々の間にある鳥居からの見晴らしは良かった。その分、階段が100近くある上に急なので、お年寄りとかは、事務所横の車道から上っていた。
私はシイとこの神社にたまに遊びに来る。もちろん、階段を上る。秋のこの時期はイチョウや紅葉が綺麗で、ドングリ集めとかしていた。
私は本殿で、上手く話せますように。とお願いした。緊張と不安と、いろいろな気持ちでいっぱいだ。
お願いしてから、しばらく本殿の階段に座っていた。この階段は鳥居の目の前にあるので、景色が良かった。紅葉した樹々に挟まれても、より映える朱い鳥居。その間から秋の優しい青い空。私の気持ちは、徐々に穏やかになっていった。
私は、気持ちが落ち着いて来ると暇になってきて、いつもみたいに遊び始めた。イチョウはまだ散っていなかったから、銀杏は落ちていなかった。銀杏は踏んで潰すとすごく臭い。落ち始めると、お年寄りがちょこちょこ拾いに来て、焼いたりして食べているらしかった。
イチョウの木を見たら、アリが行列を作っていた。ずっと上まで登って行く。私は、どこから来てるのか気になって、行列を追って見た。結構続いていて、木と木の間の草むらに入っていたので、私は追尾を諦めた。
しばらくアリの行列を観察していた時だった。
「何してんの?」
と、声がした。私はびっくりして振り返ると、レンがいた。
「びっくりした!レンこそ何でこんなとこに…」
レンは私に近づくと、
「もう2時だよ。ジュンペイは来ないんじゃない?」
と言った。私はまたびっくりした。
「何で…知ってるの?」
「タツヤがおまえに話してるの、聞こえたから。」
そう言えば、タツヤを追った入り口で話したんだった。そのちょっと後にレンが戻って来たけど、やっぱり聞かれてたんだ。
「気になって来たけど…全然ジュンペイ来ないし、おまえは何か遊んでるし。」
レンが笑って言った。ずっと見られてたのかと思うと、私は恥ずかしくなった。
「だって、暇なんだもん。」
「諦めて帰ればいいじゃん。1時間経ってるよ。」
「まぁ、そうなんだけど…」
アリの行列に夢中になってたなんて、恥ずかしくて言えない…
「ジュンペイに何の話があったの?」
「え…えーと、ひ、秘密…」
「告白の返事?まだしてないとか…無いよね?」
レンは私の表情を読もうとしていた。私は、突然のレンの登場と私の1人遊びを1時間も見られていた恥ずかしさとで、パニックだった。今読み取られたら隠せない。私はそう思って後ろを向いた。
「あははは!ごめん、ごめん!」
とレンが笑いながら言った。
「もう読まないから!こっち向いてよ。」
私は恐る恐るレンの方を向いた。
「本当はもうオレ、分かってるから。」
レンは笑いながら、でもちょっと悲しげに言った。




