はつこい 3
次の日、私はチャンスがあったらテラに思い切って聞いてみようと決めた。
でも、出来なかった。
恥ずかしくて、テラの居る方を向く事さえ難しかったのだ。緑川とは席が近いのもあったし、普通に話しかけて来るから話せたのだけど。
そんな私に、2人で話せるチャンスがやって来た。テラとのチャンスではなく、緑川となんだけど。しかも、チャンスだと思ってたのは私ではなく、どちらかと言えば緑川の方だったみたいだ。
そのチャンスは掃除の時間だった。
当時はまだゴミ処理にうるさくなくて、ゴミは焼却場で燃やされていた。焼却場は体育館の近くにあって、教室から離れた場所にあった。なので、ゴミ出しジャンケンには毎回みんな熱くなったものだった。
その日私は運悪くジャンケンに負けて、ゴミ出しに向かっていた。すると、別の掃除場所でのジャンケンに負けた緑川が声をかけて来た。
「おまえさー誰好きなの?」
緑川はいつも突然だ。私はびっくりして
「えっ?」
と、返した。すると、緑川はキョロキョロして周りに人が居ないのを確認してから、
「あの日さぁ、廃ビル探検した後の話ね、おまえらが知らない秘密があるんだ〜」
と、ニヤニヤしながら話して来た。
「何それ?」
と、私が聞くと、
「好きな人教えてくれたら教えてやる」
と言って来た。相変わらずな緑川だった。
「あんたが教えてくれたら教えてあげる」
と言う、良くあるやり取りをしてなかなか話が進んで行かないのだが、焼却場はまだ遠い。
だんだん面倒になって来たのか、緑川は、
「オレじゃなくて、テラのを教えてやるよ」
と言い出した。私はちょっと動揺した。
私は今日、テラにあのキスの事を聞こうと思って聞けずにいた、と言うか、顔さえまともに見れない状態だった。それに正直なところ、緑川には悪いけど、緑川の好きな人が知りたいのは、私だけが教えるのは嫌だし、シイが多分緑川を好きだから聞けたらラッキーってくらいの感じだった。
だから私は、テラのを教えてくれると聞いて、緑川がテラのを話すのはどうなんだって思いよりも、テラの好きな人を知りたい!と言う思いの方が優ってしまった。
「…じゃあ、いいよ」
と、私は緑川の提案を受け入れてしまったのだった。
どっちが先に言うかは、ジャンケンにした。私が勝った。緑川は自分の事じゃないからか、
「おまえが好きなんだって〜」
と、サラッと教えてくれた。私は、
「本当に?嘘だー」
と言いながらも、顔が熱くなって、ニヤニヤしてるのが抑えれなかった。そんな私の様子を見て、緑川は意外な事を言って来た。
「おまえさ、知ってたよね?」
私がびっくりしていると、
「オレさ、実は昨日テラから聞いたんだよねー全部。」
と、緑川は今までで一番のニヤニヤ顔で話始めた。
この時私は、男子もこう言う話を詳しくし合うんだって、初めて知ったのだった。今になって思うと、緑川が芸能ジャーナリスト並みだっただけなのかもしれない…。
緑川は、テラが私だけに「好きだよ」って言ってからキスをした事も、2回キスをした事も、私の知りたかった事を全部教えてくれた。
そして、
「オレら、そもそもジャンケンしてねーし」
と、驚愕の事実も教えてくれたのだった。