はつこい 2
廃ビル探検をしたのは土曜日の午後だったから、シイと報告し合ったのは月曜になってからだった。でも、流石に誰かに聞かれたりしたら恥ずかしいから、学校帰りに話した。
学校は、朝は登校班で行くが、帰りは好きな友達と通学路を通って帰るスタイルだった。シイとは2年生から同じクラスだったが、家が近いと言うこともあり仲良くなって、いつも2人で帰っていた。
私達は、いつもは道端に生えている花や草や、そこにいる虫などで遊んだりしながら帰っていたが、その日は、前後に誰も居なくなるのを確認すると、声を潜めて話始めた。
その日私は恥ずかしくて、テラとは話せなかったし、見るのも出来なかった。それはシイも同じだった。唯一、緑川だけは普段通りだったが、あの事には触れては来なかった。
4人で、「4人の秘密ね」と、約束したのが良かったのかもしれない。すごい事に、この幼い4人の秘密の約束は、未だに4人以外知らないと思う。
それだからこそ、私の記憶には良い思い出となっているのだろう。
「ねぇねぇ、あれ、どうだった⁇」
と、私は興奮気味にシイに尋ねた。
「ヤバイよね!めっちゃドキドキした!」
「だよね!だよね!」
「しーっ!声大きいって!」
私達は出来るだけ声を抑えて、あの時の興奮を報告し合った。
「本当に緑川ってばかだよねー」
なんてディスりを入れつつ、私はシイにキスをする時のことを詳しく聞き始めた。
「2人が後ろ向いてからも恥ずかしくて、『どうする?』って言ってたんだけど、テラが、『目閉じて』って言ったから、目を閉じて、もうさ、めっちゃドキドキしてて」
「うわぁー!分かる分かる!」
「で、チュッって〜」
「ひゃぁ〜‼︎」
私達は土曜の事を思い出して、2人で興奮していた。
「ファーストキスなんだけどー‼︎」
「私も!」
そう、私とシイは同じ日に同じ相手とファーストキスをしたのだった。
帰り際、2人で「これは秘密の約束ね」と、確認し合って別れた。
私はシイと別れてからも1人興奮していた。でも、ちょっと落ち着いて来てから、
「あれ?」
と思った。
「そういえば…」
私はシイの話を聞いて、自分と一緒だー!と興奮して聞いていたけど、良く良く思い出してみると、ん?と思えて来た。
シイは、「目を閉じて」ってテラに言われたって言っていた。でも、確か、私には違う事を言ったような…
それにあの日、シイとテラのキスが終わった後に話した時、緑川が2人を尋問していた時も、チュッって一回した。って言ってた気がする。
私は興奮で、キスの事の前に廃ビル探検をしていた事すら忘れていたけど、もう一度、あの日の事を思い出してみる事にした。
良く思い出してみると、テラはシイには、
「目を閉じて」
だったけど、私には、
「好きだよ」
って言ってた気がする!
それに、キスも2回だった…
あの時は、テラはシイとした後に私とだったから、シイと同じ様にしてるんだと思ってたし、セリフもあまり気に止めなかった。それ以上に私がドキドキ、バクバクして、冷静でいれる状態じゃなかったのだ。
でも、今落ち着いて思い出してみると、シイの話とは違う事が分かって来た。それに気付いたら、私はまた興奮でドキドキして来たのだった。
家までの残りの道のりを、私は走って帰った。