らすこい22
「ぉわっ⁈」
シャワーから戻ったキーチが、座り込んでいる私に驚いた。
「え?どーしたの?体調悪いとか?」
キーチは布団脇から動かずにいる私の側に来て、心配そうに顔を覗き込んだ。うわっ!近いっ‼︎私は思わず顔を逸らした。ドキドキする。あー…やっぱり、帰りたく、無い。
「顔、赤い。」
キーチはそう言って、私の頬に触れた。ドキドキする。ドキドキが、どんどん増していく。
「さっき、言ってくれた、会いたいって、本当?」
キーチは私の耳元で聞いた。さっきより近くなって、私の鼓動が大変な事になっていた。
もう、顔も真っ赤だろうし、キーチ近いし、恥ずかしくて、顔上げれない。
私が無言で頷くと、キーチは、
「あー…」
と小さく言って、耳にキスをした。首筋や頬にもキスをして、
「首まで真っ赤。」
と言って、首筋を指でなぞった。
「あんまり、いじめないで…」
私はそう言うと、首筋を手で覆った。
するとキーチは、
「だってさ、さわちゃん学祭来てる事教えてくれなかったじゃん。」
と言った。あ。怒ってる?
「俺がたまたま後輩から話聞いたから知れたけどさ、そーじゃ無かったらそのまま帰るつもりだったんでしょ?」
「ご、ごめんなさい…」
「なんでだよーってなるじゃん。」
えー…まぁ、なるよね。1番の理由はしんちゃんに伝わるのが嫌だからなんだけど、そんな事言えない…でも、
「あの、えっと、カノに誘われたのも急だったし、それに、なんか、気を遣わせちゃうし…」
って思っちゃったのも事実なんだよね。キーチは優しいから、私が行くって知ったら、きっと自分の予定とか私に合わせてくれちゃいそうなんだもん。それに、人気者っぽいし。いろんな人から声とかかけられてそう。私はカノみたいに対応出来ないから困らせちゃうだろうし。
「えー?そんなん気にする事無いのにー」
いやいや、ほら、そーゆー所。気を遣ってるじゃん。
「まぁ、でも俺もさ、さわちゃんとはヨシがいない所で会いたかったんだよね。」
「え?なんで?」
「ん〜絡んで来るから?しかもいろんな人居る所で。」
「あー…」
ヨシくんって、そーゆーの気にしなさそうだもんね。なんか分かるかも。
「でもやっぱり連絡欲しかったなー。そしたらもっと早くから会えたのに。」
キーチはそう言うと、私のほっぺを軽くつねった。
「ごめんなひゃい…」
「ん。」
そう言うとキーチは手を離し、つねった頬を手で包んで、口にキスをした。それから指で私の唇をなぞった。なんだろ、なんか恥ずかしい…
キーチは指を止めて、
「今日は、いい?」
と聞いた。私は、小さく頷いた。
正直、したくてしたくて仕方なかった。
キーチとしたら、何か変わる気がしてた。ずっと心の中でモヤモヤしていた物の正体が、分かるよーな気がしてた。
キーチは私に、好き。とは言わなかった。可愛い。は、たくさん言ってくれたけど、好きは、一度も無かった。
でも、すごく優しさに包まれた様な気分が、ずっとだった。
それは、ダイスケさんの時の様な感覚だった。
意地悪な時もあるんだけど、すごく大切にされてるって、大事にされてるって感じて、幸せだった。
キーチは終わった後も、眠るまでずっとギュッとしてくれていた。
私は、今まで5人の人としたんだけど、人によってそれぞれ違った。誰がいいとか、本当に違うから言えないけど、分かった事はあった。
優しくて気持ちのある行為は、幸せを感じるって。
キーチには、好きとか言われてないけど、幸せを感じた。
一つ驚いたのは、今まで全然進展しなかったキーチなんだけど、一度したら吹っ切れたのか、朝起きてから別れるまでに3回もした事だった。
カノからは結局お昼前に連絡が来たんだけど、その間に3回…昨日から数えたら計4回…朝起きてして、ご飯を食べてまったりしてからして、別れる前にして…
キーチは1回にかける時間が短めだから私も出来たけど、それにしても元気過ぎでしょ!
今まで奥手そうに感じてた分、ギャップが凄い。
でも、求められるのは、やっぱり嬉しかった。