らすこい21
着信はいいとして、いや、キーチからの電話なんて初めてじゃない?ってくらいなんだけど、まぁ、着信は置いとこう。それより直後に来てるメール。ドキッとした。このメールからすると、暇だけど、どこでどうしてる?ってゆー内容じゃなさそう。
うーん、どうしよう。キーチからの連絡に気付いて、思わずカノ達から離れて来ちゃったけど、良く考えないとだよね。
「電話なんだった?」
とりあえず、これにしよう。普通に着信あったらこう返すもんね。でも、これだと電話来ちゃうかなぁ…って、どんな内容でもメール返したら電話来そうな気がする。
はぁ。相変わらず自分でも嫌になるなぁ。私、本当にどうしたいのよ。って感じ。
分かってる。覚悟、決めないと。
今日のこの機会に何も進展しなかったら、キーチとは最後にする。
メールの返信に悩み過ぎて、電話する事にした。結局きっと電話来そうな気がするから、私から掛けた方が気持ちの準備が出来るしね。
私は深呼吸を何回かしてから、電話をかけた。
コール音がする度に、心臓がバクバクする。
…って、出ないし‼︎
はぁーーーーーーーっ…
緊張したのに…一気に疲労感が…まぁ、ね。仕方ないよね。タイミングってあるもんね。私は座席を倒して、ゴロンとした。窓から見える夜空をボーっと眺めてると、眠気が襲って来た。今日はいろいろ気を張っていたから、疲れたなぁ…
ピリリリリリ。
電話の音で、ハッとした。やば。寝そうだった。
「も、もしもし?」
「さわちゃん!今どこ⁈」
「え?今…?」
「ヨシんち?」
「え…違う。えっと…」
「学祭来てたんだよね⁈もう帰ってるとか?」
「え?あの、違う…」
キーチの勢いに圧されて、頭が回らなかった。えーと、とりあえず学祭に来てたのは把握されてるみたいだった。
「じゃあ、どこ⁈」
どこと言われても…適当に停めた駐車場だから説明出来ない。
「まだこっちにいるなら会いたいんだけど!」
えっ…⁇キーチにそう言われて、心臓がバクンッと高鳴った。こんな風にストレートに言うキーチ、初めてだ。
「…私も、会いたい。」
気付けば、そう言っていた。
「うわー‼︎マジで⁈」
興奮気味なキーチの声に、私は我に返った。うわー‼︎恥ずかしいっ‼︎
「大学まで来れる⁈俺今大学に居るから。」
「あ、大学なら分かるかも。」
「じゃあ、正門で!待ってる!」
私は記憶を頼りに、大学へ向かった。
正門になんとか着くと、キーチらしき人が居た。車を停めると、運転席側に近づいて来た。
「カノちゃんの車だったんだねー」
「うん。」
「もしかして、ヨシんち戻る?」
「…明日の朝に戻る。」
「え?まさかまた漫画喫茶で寝ようとか考えて無いよね?」
「えっと…」
私が返答に困っていると、
「あのさー、俺を頼ってよ。」
と言われた。
今のキーチは、私の知らない、積極的なキーチだった。酔ってるんだと思う。たぶん、かなり。酔ってるから。って分かってるけど、そんな言い方、ドキドキする。
「…はい。」
「うん。じゃあ、うちに行こ。」
キーチはそう言うと助手席に乗った。
「ここのスペース止めて大丈夫だから。」
キーチに言われて、空きスペースらしき場所に車を止めた。
「来てとか言ったけど、部屋汚いかも。ごめんね。」
緊張気味の私とは対照的に、キーチは穏やかだった。部屋に入っても、
「ちょっと片付けるから、先にシャワー浴びててもらえる?」
と言って部屋の片付けを始めた。私的にはそんなに散らかってるよーには見えなかったけど、散らかってなくも無い気もしたけど、気にする程じゃないってゆーレベルだった。とりあえず、キーチに従ってシャワーを浴びさせてもらった。
シャワーから戻ると、キーチがベッド脇に布団を敷いていた。
「あ、俺こっちに寝るから、さわちゃんベッド使って。」
「あ、うん。…ありがとう。」
「じゃあ、俺もシャワー浴びて来る。」
キーチはそう言って、シャワーを浴びに行った。
私は、布団の脇で、脱力した。
私、期待してたのに。酔ってるとは言え、あんなストレートで積極的なキーチ初めてだから、期待してたのに。まさかの別寝…
はぁ…どうしよう。帰ろう、かな…