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つれづれ野花  作者: あぐりの
らすこい
173/190

らすこい10

「ずっと言おうと思ってたけど、呼び捨てでいーよ。みんなそーだし、なんか慣れないし。」

そっか。確かにハナエちゃん達も初めは違ったけど、気付いたら呼び捨てになってる。みんなの距離の詰め方凄いよね。自然。

でも良かった。私も呼び捨ての方が響きが良いなぁって思ってた。

「アイスって何個だっけ?」

「えっとねー、3個。で、カノがおもちって言ってた。あと私達の分。」

「了解〜」

アイスは任せて、カノのおもちを探した。きな粉とあんこ、どっちが良いんだろう?

「キーチ、キーチ。これ2個買う余裕ある?」

私が聞きに行くと、びっくりした様に私を見てから、

「…大丈夫!」

と言って、キーチは目を逸らした。あれ?やっぱり呼び捨て、ダメだった?

帰り道に、

「呼び捨てダメだった?」

と聞いてみた。ドキドキしたけど、まだ呼ぶ機会があるだろうし、と思って頑張った。

「えっ?いや、全然良いんだけど…言い方が…」

「言い方?」

「いや、大丈夫。呼び捨てで。お願いします。」

キーチはそう言うと、手で顔をパタパタした。暗いから表情がよく分からないけど、まぁ、大丈夫みたいだった。良かった。けど、言い方ってなんだろう?アクセントとか?何か違ったのかなぁ。

戻ってからみんなの言い方を研究したけど、違いが分からなかった。まぁいっか。大丈夫って言ってくれたし。


それにしても、今日は勝負事に向いてない。ゲームにとことん負けてる。みんなで片付けた後のゴミ捨てジャンケンも、見事に負けた。駐車場脇のゴミ捨て場に持って行って戻ろうとすると、

「さわちゃん、カノが限界だから先に帰るね。」

と、ヨシくんが眠そうなカノを連れて言った。

「車使って大丈夫だからね〜」

「うん。ありがとう。おやすみ〜」

「おやすみ〜」

カノは昨日仕事終わりが遅かったって言ってたからなー。お疲れだったんだね。2人を見送って階段を登ろうとすると、

「あ、さわ〜」

とハナエちゃんが荷物を持って近付いて来た。ん?あれ?私の荷物は?

「ごめん。私ヨウの家に行くね。」

ハナエちゃんは嬉しそうに言った。…えっ⁈

「さわちゃん、ハナエちゃん借りるね。」

ヨウさんも笑顔で言った。えっ⁈

待って待って。私、どうしたら…

当初の予定では、私とハナエちゃんは漫画喫茶で一晩過ごす予定だった。私は行った事ないけど、ハナエちゃんは何回かあるらしくて頼る気満々だった。どうしよう。場所もシステムも、何もかも分からない…不安過ぎる…

とりあえず荷物を取りに行って、キーチに聞いてみよう。漫画喫茶の場所とか知ってるかな。


部屋に戻ると、キーチはテレビを見ながらお酒を飲んでいた。キーチはお酒に強かった。こんなに飲める人いるんだなぁって思うくらい、ずっと飲んでる気がする。

「あ、お帰り。」

私に気付くとキーチはそう言った。お帰りって。なんか面白かった。

「あはは。ただいま。」

私は応えてから、

「あのー漫画喫茶の場所って分かる?」

と聞いた。

「漫画喫茶?行くの?」

「うん。」

「なんで?」

「え?なんでって…寝るため?」

私がそう言うと、ちょっと間があってから、

「あー、なるほど…」

と言ってから、キーチは私を手招きした。私はそばまで行って、座った。道を教えてくれるのかと思った。

「さっき言ってた事が、なんとなく分かってきた。」

キーチは私を見て、そう言った。さっき?さっきって…いつ?私は訳が分からなかったけど、とりあえず、じっと見られてるのは恥ずかしい。ドキドキしてくる。

「寝るなら、うちで寝ればいいじゃん。」

キーチが言った。いやーうーん、それは有り難いけど…流石にそれは、

「急に申し訳ないし。」

と私は言った。

それに、私は勉強したのだ。簡単に喜んではいけないと。

本当は、1人での漫画喫茶が回避出来るから、ありがとう‼︎って言いたかったんだけど、ダメなんだとカノから教わった。

「急って。」

キーチはちょっと笑って、

「1人で漫画喫茶には行かせたく無いし、俺何もしないから大丈夫。ね?だから、はい。決まり。」

と言って、勝手に決めてしまった。有り難いけど…何もしないって。そんな断言されるとちょっと寂しく感じるのは、私が最低だからか。

でも、キーチならそんな気がする。だって元カノと別れた原因が、先輩と2人きりで一晩過ごした。って事だった。自分がされて嫌な事って、しないよね。それに、好きでも無い人と簡単にするよーな人じゃない気が、何となくした。

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