らすこい9
カノ彼はヨシ、ハナエちゃんの好みの人はヨウ、スポーツマンの人はキーチと呼ばれていた。私を助けてくれたキーチって人が、この部屋の家主で助けて欲しいって人だった。
キーチさん?くん?は、背が高くてスポーツマンであんまり話さない感じの人な印象だった。あと思ったのは、ちょっと怖そう。見た目がね、切れ長の目がね、ちょっとね。寡黙な感じとかね。でも、優しそう。さっき助けてくれた時の手、優しく感じたもん。
ハナエちゃんがヨウさん狙いだから、私にミッションが託される事になったんだけど、寡黙な人と人見知りな私じゃあ、厳しそう…ヨシくん、期待には応えられそうにありません…
とは言え、お酒が入ればみんな陽気になって来る訳だし、キーチさんだって!話し易く…なる…よね?
って、いや、ミッション関係なく、やっぱり予想通りカノとハナエちゃんの適応力は凄くて、すぐにフレンドリーに話せていた。話題とかさ、本当に凄いよなぁ。私なんて、何話していいか相変わらず分かんないままだけど、2人は話の膨らませ方とかも自然だしスムーズ。私に出来る事は、うん、申し訳ないくらい、無いな。
そんな私が、今、実はキーチさんと2人で買出しに出て来ていた。何話していいか分からず…めちゃくちゃ困ってます。
「あ、道こっち。」
こうキーチさんが言って以来、無言が続いています…
なんでこんな事になったかと言えば、買出しゲームに私が負けたからなんだけど、ヨシくんが、
「キーチも付いて行ってあげなよ。」
と言ったからだ。いや、確かにね、1人は陽も落ちたから嫌だけどさ。…でもヨウさんと2人もな。無理だわ。
「あ、危ないよ。」
腕を引っ張られた。無灯の自転車が前から来ていた。
「ありがとう。」
私が言うと、
「さわちゃんって…ははっ。」
と笑われた。…え?
「ごめん。」
キーチさんは笑いを堪えていた。私は訳が分からなかった。
「何話そうって、ずっと思ってない?」
思わぬ事を言われて驚いた。
「家出てから、ずっと、うーんうーんって言ってる。」
キーチさんは笑いを堪えれず、また笑った。
えっ⁈声出てた⁈恥ずかしー‼︎
「俺もこーゆーの苦手だからどうしようかと思ってたけど、ははっ。和んだ。」
和んだ。って笑って言われて、ドキッとした。見た目はちょっと怖そうだけど、キーチさんは笑うと優しい顔になる。
おかげで場も和んで、
「質問でもし合う?」
とキーチさんが言ってくれて、会話も増えた。
女性不信の原因も分かった。
元カノが、サークルの先輩宅に2人きりで一晩過ごしたのがきっかけだった。何も無いって言ったから信じたけど、その後も何回かあって信じられ無くなったと話していた。
私の過去の経験から言えば、最近はおかしいくらいだから含まないけど、何も無かったな…2人きりでも。ヒマリ達に言われた事があるんだけど、私、警戒心が無さ過ぎるのと鈍感過ぎて、手が出し難いみたい。だから、なかなか彼氏が出来なかったんだなぁ。って思ったよね。
私がその話をすると、
「えー…そっかぁ…分かるよーな分からないよーな。」
とキーチさんは複雑そうな顔をした。
「もしそうなら、より戻す?」
私が聞くと、しばらく考えてから、
「いや、戻さないかな。」
と言った。
「だって、さわちゃんとは違うタイプだったしね。」
そう言われて、ちょっと、ちょっとね、モヤッとした。なんだろ。タイプ違うのかぁ…なんて思った。いや、違っていいのよ。だって私みたいな流される人はダメだから。
買い物から戻ると、4人でゲームをしていた。もちろん、普通のね。テレビゲームなんだけど、みんなでやれるゲームだった。どうやらペアになってやってるみたいで、ヨシ・カノ、ヨウ・ハナエちゃんペアになって、点数制で遊んでいる様だ。
「さわ達もやろー」
そう言われたけど、私はめちゃくちゃゲームが苦手だった。
「私めっちゃ苦手だからごめんね。」
キーチさんに初めに謝ると、
「俺強いから余裕。」
と言って笑ってくれた。
言うだけあって、本当に強かった。けど、私が弱過ぎて負けてしまい、罰ゲームで、デザートの買出しに行く事になってしまった。2度目の買出し…しかも私が弱くて…申し訳ない。
「本当にごめんね。キーチさん、巻き込んでばかりで。」
私が謝ると、
「勝てると思ったんだけどねー惜しかったよね。」
と言ってくれた。




