ながこい 12
しばらくそんな感じで話していたが、音楽を流そうとなって、タツヤがカセットを選び始めた。
タツヤの部屋にはたくさんカセットが置いてあった。当時はCDを借りて来てカセットテープに録音して、音楽を聞いていた。タツヤのお父さんの趣味らしく、棚にはたくさん並んでいた。
「たくさんあるねー」
と言って、シイも棚の方に行って音楽を選び始めた。ローテーブルには、私と緑川とジュンペイが残っていた。
ひょんな流れから、あのプールの日の話になった。きっかけはタツヤだった。
「そう言えばさ、おまえらコーヤ達とプールで遊んだんだって?」
コーヤ達と言うのは、緑川と一緒に来ていた別の学校の友達の事だ。
「あの日、オレらとすれ違ったよね?」
「んー?そうだっけ?」
と、シイが微妙な感じで答えてくれた。
「コーヤ達と会った時にユーヤが、女子に誘われてプールに来たんだーって自慢したから、昨日会った時、オレらも女子と遊んだもんねー!ってユーヤ自慢仕返されてた(笑)」
「あはは…」
「実際は誘われたって言うか、ユーヤがそのと遊びたくて企画して行ったんだけどね。」
サラッとユーヤの好きな人を暴露してしまった事に気付いたタツヤは、慌てて、やべっ内緒ね!と口止めした。
あの日の事がユーヤのためだったと分かったのだが、それでも私の心はモヤモヤしていた。一緒に遊んでいた女子が羨ましかった。
ジュンペイからはっきりと、好きな人が私だと言われた訳では無かったし、今のこの状態もどういう気持ちがあるのか分からないし、今日も、緑川とタツヤがシイとミオと遊ぶのに(ミオは来れなかったが)付き合ってるだけなのかも知れない…私の心はモヤモヤ、グチャグチャになって来た。
そんな私の気持ちをよそに、緑川パワーが炸裂する。
「ユーヤのそのが好き、ってのは聞かなかったって事で、おまえら、誰が好きなの?」
相変わらず、この強引に流れを変えて行く緑川パワーには圧倒される。
「タツヤのもバレてるって事で、言っちゃってもいいよね?」
「はぁ?緑川、まじやめろー!」
「あはは、ミオでしょー分かってる(笑)」
と、シイが言った。そして、シイには珍しく、
「私、ジュンペイのも分かってる。」
と言って、意地悪っぽくジュンペイを見た。
それには、緑川とタツヤの方が驚いた。2人は、あの放課後の事を知らない様だった。まじで⁈と、ジュンペイの方を向くと、
「多分、バレてる。」
と、バツが悪そうにジュンペイが言った。シイが立て続けに、
「イエスだよね?合ってるよね⁈」
と言うと、ジュンペイは、あー、と言って机に突っ伏して、
「…合ってる。」
と言った。
緑川とタツヤは意味が分からないと戸惑って、どういう事?とシイを尋問し始めた。シイは、
「話していいの?」
と、ジュンペイを見た。いいよもう。と言う投げやりな許可を得てから、シイは説明しだした。
緑川も、オレもー!と言ってシイ達の方へ行ってしまったので、ローテーブルには、私とジュンペイだけになってしまった。気まず過ぎる…
しばらく机に突っ伏していたジュンペイが、そのまま私の方へ顔をちょっとだけ向けて、
「…おまえも、分かったよね?」
と聞いて来た。私は恥ずかしくて、顔が真っ赤になるのが分かった。
「…多分。」
と答えるのが精一杯だった。バクバクが止まらない。
「おまえのも、教えて。」
死んじゃうかと思った。いや、もう、死んじゃう。
「無理〜」
「なんで?オレのバレてるのに。」
「だってあれは、クジだったじゃん。」
私はそう言って、恥ずかしくて耐えれなくなった顔を隠すために、背もたれにしていたベッドに、顔を埋めた。
「それはそうだけど…」
と言いながらジュンペイは体勢を変えて、ベットに肘を付きながら私の方を見ていた。
「ねぇ、教えてよ。」
「…だって、ちゃんと名前聞いてないから、合ってるか分からないし。」
「名前言ったら、教えてくれる?」
「ん〜考える。」
「えーなんだよ〜」
「…だって恥ずかしいもん。」
「オレだってそうなんだけど。」
私達の斜め後ろの方では、まだシイへの尋問が続いているようだった。シイは事細かに説明しているらしい。
「オレ、おまえの好きな人、2択なんだよね。」
と、ジュンペイが言い出した。
「レンか、オレ。」
私はドキドキが半端なかった。
「イエスかノーで答えてよ。いい?」
「えっ!良いわけ無いじゃん。」
私は布団から顔をちょっとだけ上げて言った。
「…レン?」
ジュンペイ、聞いて無いし。
「ねぇ、イエス?ノー?」
どうしよう…と思って私が無言を貫いていると、
「…レンなの?」
と、ちょっと不安げに聞かれた。私は何だか居たたまれなくなって、仕方なく答えることにした。
「…ノー」
「マジで⁈本当に⁈」
ジュンペイは嬉しそうにそう言った。
「じゃあさ…オレ?」
もうホントに死んじゃう〜‼︎
と、その時だった。
「ジュンペイ!ごめん!」
いきなりタツヤが言った。私達はびっくりした。ジュンペイの所まで来て、コソコソっと、でも私にも聞こえていたけど、
「プールの話、ヤバかったんじゃね?」
と言った。ジュンペイは、
「…今もなんだけど。」
と、ボソッと言った。