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つれづれ野花  作者: あぐりの
ながこい
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ながこい 7

私のドキドキはバクバクに変わっていた。ノーって事は、1組のそのちゃんじゃないって事だ。

「えっ!意外‼︎」

と、リュウヘイが言った。

「オレ絶対1組だと思ってた!」

リュウヘイはきっと、そのちゃんだと思っていたに違いない。

「2組か〜!8人もいる〜」

リュウヘイは予想が外れたのもあって、頭を抱えた。1組なら5人だったのだが、2組には8人同姓の女子がいた。でも2択で臨んでいた私としては、2組で嬉しかったのだった。私はその喜びを隠しつつ、質問を考えた。悩んだ末に、

「髪の毛は短いですか?」

と質問した。8人のうち、3人は短かった。私とシイは長い方だ。

「肩より上って事?じゃあ…ノー」

ジュンペイは思い出すように答えた。

「ねえ、もうやめない?かなり絞られてるよね?」

と、ジュンペイが言い出した。残りは5人に絞られるのだが、失礼ながら2人は確実に無いと思われる。だから実際は、私かシイか、もう1人の子の3人なのだ。

リュウヘイも同じことを考えたようで、

「あれ?1人ずつ名前言ったら、誰か正解になるじゃん‼︎」

「だからもうやめようって〜」

と、ジュンペイは机に突っ伏した。私もバクバクが増す一方だった。するとシイが、

「じゃあさ、もう言っちゃえば?」

と、楽しそうに言った。私は意外だった。シイはドキドキしていないのかな。3人の中に自分も含まれているのに。


実は、だいぶ経ってからシイが教えてくれたのだが、6年の始めの頃は、私の読み通り、ジュンペイが好きだったようだ。でも夏休み前には、修学旅行頃から良く話すようになった緑川を好きになっていたらしい。だから、あの時楽しそうにしていたのだった。むしろ、ジュンペイが知っている緑川の好きな人の方が聞きたかったそうだ。


そんなシイの本心を知らない私は、シイもシイで、自分が好かれていると言う自信と言うか出来事とかがあるのかな、などと考え始めていた。

「はい!はい!」

と、急にリュウヘイが手を挙げて、

「本当はさ、3人だけど、実際はさ、この2人のどっちかだよね⁇」

と、確信をついて来た。そうなのだ。もう1人の子は、クラスも同じになった事がないし、話しているのを見た事も無かった。何となく、私も違うだろうなって思っていた。

リュウヘイが、

「もー、じゃあさ、オレにだけ教えて!」

と言って、ジュンペイを無理矢理連れて教室の角に行き、ヒソヒソと話始めた。

私とシイは、何だか気まずくて、

「さっさと教えてくれたらいいのにねー」

「次の質問どうしようかー」

などと言って場を過ごしていた。すると、

「あー、まじかー!」

と言うリュウヘイの声が聞こえて来て、2人が戻って来た。

「うちらには教えてくれないのー?」

と、シイが言うと、リュウヘイがニヤニヤしながら、

「シイ、オレが教えてあげよっか⁇」

と、シイに言った。

「えっ、何で?私も知りたいんだけど」

と、私が言うと、

「ジュンペイが教えてやれよー」

と言った。ジュンペイは、

「えっ」

と言って私を見たが、すぐに、

「リュウヘイおまえさー!」

と言ってリュウヘイを追いかけ始めた。

私とシイは唖然としていたが、2人で顔を見合わせて、

「リュウヘイ、ジュンペイの好きな人知ってから態度変わり過ぎー」

と笑った。


足の速いジュンペイから逃げれる訳もなく、すぐに捕まったリュウヘイは、

「ごめん、ごめん」

と、軽く謝っていたが、

「でもさージュンペイ、ちゃんと教えてあげないとさ、クジの意味無くねぇ?」

と、最もな事を言い出した。

「まぁ、そうなんだけど…」

「ここは男らしくズバッとさ、言っちゃえって。」

「おまえ、人ごとだと思って…オレとおまえは違うんだってば。」

「だーかーらー、代わりにオレが言ってやるって!」

「ちょっと待って。それは何か違う気がするんだけど。リュウヘイがバラしたいだけだろ?」

「それもある!」

「だからリュウヘイには言いたく無かったんだよ〜」

「でも、オレには言っていい権利があるはずだ!」

黙って2人のやり取りを聞いていた私達だったが、リュウヘイのセリフを聞いて、思わず、

「えっ?」

となった。リュウヘイには言っていい権利があるって、どう言う事⁇

「だーっ‼︎ちょっとリュウヘイ、マジでやめて!」

ジュンペイは焦ってリュウヘイを教室の角に連れて行った。2人はコソコソまた話始めた。


私とシイは、リュウヘイの言った意味が良く分からなかったので、2人が何を話しているのかサッパリだった。

ジュンペイ達の様子を見ていると、リュウヘイが時々むくれて拗ねた表情をしていて、チラチラこちらの様子を伺っているのが分かった。

「私じゃないと思うよ。」

と、突然シイが小声で言ってきた。私はびっくりして、シイに尋ねた。

「えっ⁈何で⁇」

「だってさー、うちらのどっちかだとしたら、絶対私じゃないよ。うちわとか、プールとか、今とか、見てたら分かるもん。」

「うちわとか、プール…」

シイは気付いていたのだ。うちわの事もプールの事も。そして多分、私の気持ちにも。

「ジュンペイに聞こっか!」

シイはちょっといたずらっ子みたいな表情をして、

「ジュンペイ〜!私の2つ目の質もーん!私じゃ無いよねー?」

と、ジュンペイ達に向かって言った。

ジュンペイとリュウヘイが振り返って、リュウヘイがニヤニヤしながら、ジュンペイの方を見て、

「ジュンペイ〜答えはー?」

と、また意地悪そうに言った。私はもうバクバクで身体中が熱くなって来た。

その時だった。

ガラっとドアが開いて、

「ジュンペイー!リュウヘイー!見つけたぞー!見廻り当番はどうしたー‼︎」

と、先生が入って来た。

リュウヘイとジュンペイは、

「やっばー!」

「今して来まーす‼︎」

と、慌てて出て行った。

「おまえらも早く帰れよー」

と、先生は私とシイに言って、教室から出て行った。時計はもう、5時近かった。


私達は結局、ジュンペイから答えを聞けないまま、帰路に着くのだった…

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